研究課題
マルチキナーゼ阻害剤であるニンテダニブは、特発性肺線維症の進行抑制効果があることが複数の第Ⅲ相試験で示されている。特発性肺線維症の進展にkinase遺伝子が関連している可能性があることから、次世代シーケンサーを用いて、特発性肺線維症肺と正常肺のkinase遺伝子発現について網羅的に比較検討を行った。RNAlaterで保存した特発性肺線維症肺13サンプルおよび正常肺(肺癌手術摘出肺の残余部)8サンプルからRNAを抽出し、SureSelect Human Kinome RNA Kit(Agilent Techonologies)を用いてライブラリを作成した。MiSeq(illimina)を用いてシーケンスを行い、特発性肺線維症肺において発現量に有意な差のあるkinase遺伝子を複数見出している。これらの遺伝子発現は蛋白レベル(免疫染色)でも確認を行い、概ねシーケンス結果と矛盾の無い結果であった。ただし、様々な細胞を含む肺組織ブロックでの遺伝子発現解析では、特発性肺線維症肺と正常肺の細胞構成の違いが、遺伝子発現解析結果に大きく影響する事が判明した。この影響を取り除くためには、単一の細胞集団を抽出して、それぞれの細胞種ごとに解析を行う必要がある。慢性的な肺胞上皮の障害が特発性肺線維症のトリガーとなるとされていることから、今回は肺胞上皮に着目した。レーザーマイクロダイセクション法(LMD7000、Leica Microsystems)を用いて、特発性肺線維症および正常肺の肺胞上皮を切り出し、RNAを抽出した。抽出したRNAを用いてTruSeq RNA access(illumina)でライブラリを作成し、遺伝子発現解析を行った(HiSeq 4000、illimina)。シーケンスはすでに終了しており、現在データ解析中である。
2: おおむね順調に進展している
次世代シーケンサーを用いたキナーゼ遺伝子発現解析およびレーザーマイクロダイセクションを用いた遺伝子発現解析は当初の予定通りである。
マイクロダイセクションを用いた遺伝子発現解析では、RNA抽出の過程でのRNAクオリティーの低下が不可避であり、それに起因する出力データの低下が生じた。現在シーケンスデータを解析中であるが、十分なデータ出力の為に、RNAのクオリティーを向上させた上で再度シーケンスを検討している。また、今回の検討において抽出された遺伝子発現差のあるkinaseについて、その阻害剤を用いて、ブレオマイシンモデルでも抗線維化作用を確認する予定である。抗線維化作用が確認できれば、特発性肺線維症に対する新規薬剤候補として臨床応用の可能性が見いだせる。
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