研究課題/領域番号 |
16K15465
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲城 玲子 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50232509)
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研究分担者 |
川上 貴久 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10722093)
南学 正臣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90311620)
田中 哲洋 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90508079)
加藤 秀樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90625237)
吉田 瑶子 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (90649443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | D-アミノ酸 / D-セリン / 慢性腎臓病 / 尿細管間質障害 / 腎臓老化 / SASP / 近位尿細管上皮細胞 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
近年、D-アミノ酸の生体内での病態生理学的意義が注目されている。我々は、慢性腎臓病(CKD)の進行に重要である尿細管障害、特に尿細管間質の線維化に関連するD-アミノ酸の探索を試みた。具体的に、ヒト近位尿細管上皮細胞培養株であるHK-2とヒト近位尿細管上皮細胞初代培養細胞であるNHRECを用い、それらの培地中にD-セリン(CKD患者血中にて濃度が上昇することが示唆されている)を負荷したところ(10-20mM, 48hr)、L-セリンでは変化を及ぼさないが、D-セリン添加で細胞増殖障害が生じることが示された。この細胞増殖障害は、細胞生存判別試薬を用いた細胞数カウントとMTSアッセイの両者で確認された。またCKD患者で血中濃度が変動することが示唆されている他のD-アミノ酸であるD-プロリン・D-アラニンにおいても同様の実験を行ったが、細胞増殖障害は認めなかった。D-セリンによる尿細管細胞増殖障害の機序の1つとして、BAXとPUMAの遺伝子発現上昇を認め、ミトコンドリア依存性のアポトーシス誘導シグナルが関係していると考えられた。D-セリンによる尿細管細胞障害の表現型としては、アネキシンV染色陽性細胞、及びカスパーゼ3/7活性陽性細胞の増加を確認し、アポトーシス陽性細胞の増加が確認された。また、D-セリン負荷で細胞周期停止に関わるp16とp21の発現も亢進し、PI染色でG2/M期細胞周期停止を確認した。さらにD-セリン負荷により老化の表現型が亢進することをγH2AX染色とSA-βGal染色陽性像にて確認した。D-セリン負荷で誘導される尿細管細胞老化は、IL-6とIL-8の発現上昇、分泌上昇を認め、Senescence-Associated Secretory Phenotype(SASP)を示すことから、周囲の細胞への炎症波及を起こす可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
D-アミノ酸の、中でもD-セリンのヒト近位尿細管上皮細胞への病態生理学的活性の一端を明らかにすることが出来た。今後、in vivoにおけるD-セリンの病態生理活性の解明を遂行する上で有益な情報が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroにおいてD-セリンのヒト近位尿細管上皮細胞への病態生理学的活性の一端を明らかにすることが出来たので、それら成果に基づいて、in vivoにおけるD-セリンの腎臓(特に尿細管間質)における病態生理学的活性の解明を遂行する。
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