研究課題
遺伝性嚢胞性腎疾患の原因遺伝子は多岐にわたり、遺伝学的に正確な診断や診療方針を決めるためにも遺伝子診断は重要である。今回、私たちは次世代シークエンサーにおける嚢胞性腎疾患遺伝子診断パネルを構築した。Human Gene Mutation Databaseや過去の報告、専門家の意見をもとに常染色体優性多発性嚢胞腎や常染色体劣性多発性嚢胞腎、ネフロン癆を含む9つの嚢胞性腎疾患の原因遺伝子70個を対象としたRNAプローブライブラリーを作成した(アジレント・テクノロジー社)。シークエンスにはMiSeq(イルミナ社)を使用した。変異解析にはBWA、SAMtools、GATK、VEPおよびGEMINIソフトウェアを用い、CONTRAにてコピー数多型解析を行った。臨床的に遺伝性嚢胞性腎疾患と診断された患者を解析し、PKD1遺伝子変異を21例(うち新規変異14例)、PKD2遺伝子変異を5例(うち新規変異4例)、PKHD1およびCEP290の複合ヘテロを1例ずつ認め、嚢胞性腎疾患関連遺伝子を網羅的に解析可能な診断パネルは有用であることが示唆された。嚢胞性腎疾患患者に限っても、すでに78名の解析を施行し、新規PKD1/PKD2遺伝子変異を14変異検出しただけではなく、ARPKD症例, NPHP症例、Joubert症候群症例などの遺伝学的診断を行っている。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンサーによるPKDパネル作成が完成しており、アメリカ腎臓学会に発表。さらに、すでに臨床研究がスタートしている状況であるため。
すでに我々は、画像診断上ADPKDとされるべき症例の中にNPHPやARPKDなどが混在していることを発見しており、孤発例や非典型例に注目しつつNGS診断パネルを用いた遺伝子診断を重ね、遺伝子プロファイル作成を行う。また、PKD1/PKD2に変異がない症例は随時、全エクソン解析を行うことで、新規PKD原因遺伝子を明らかする。さらに東京医科歯科大学腎臓内科とその関連18施設でのトルバプタン使用症例は60例を超えており、すでに当該関連施設との多施設共同コホート研究を5報報告しており(BMC Nephrol. 2013,Clin Exp Nephrol. 2016x3報など)、同様に多施設共同研究としてこれらについてもNGS診断を行い、遺伝子データを包括するトルバプタン使用症例レジストリを作成し、後述の遺伝学的バイオマーカー開発につなげていく。また、組織サンプルを活用し、体細胞変異についても検討を進めていく。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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