腎不全で透析を受けている患者の血中には、CPP(Calciprotein particle)と呼ばれるコロイド粒子が出現する。CPPとはリン酸カルシウムと血清蛋白Fetuin-Aの複合体で、あたかも「病原体」のように自然免疫反応や細胞障害を誘導する活性がある。最近の臨床研究で、血中CPPレベルが慢性炎症や血管石灰化の重症度と正相関することが報告され、CPPが透析患者の生命予後を悪化させる原因物質である可能性が示された。本研究では「CPP吸着カラム」を作成し、透析回路に接続して血中からCPPを除去すれば、慢性炎症や血管石灰化が治療できることを、ミニブタ血液透析モデルを用いて検証することを目指した。 ミニブタの両腎を摘出して腎不全を導入後、ヒトに用いるのと同じ透析装置、透析回路、透析液を用いて隔日に血液透析を行った。経時的に採血し、一般血液検査の他、CPPおよび炎症マーカーを測定した。30日後に屠殺して心機能、血管石灰化、血管内皮機能(内皮依存性血管弛緩反応)を評価した。CPP吸着カラムを使用した2頭と使用しなかった2頭で比較した。予備的検討では、一般血液検査ではCPP吸着カラム使用群と非使用群で大きな差はなかったが、血管内皮機能に関しては、CPP吸着カラムを使用すると改善することが分かった。血中CPPおよびCPPの出来やすさの指標などについて、現在検討中である。 コストの関係で、実験に供するミニブタの数を増やすことができず、確定的なことは結論できないが、結果は有望である。今後は、別の研究費を獲得し、個体数を増やして検討する必要がある。
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