研究課題
目的 血管内皮細胞でのオートファジー機構不全が糖尿病腎線維化に及ぼす影響を明らかにするとともに、新規治療戦略開発の基盤となる研究を行う。研究実績1)培養ヒト血管内皮細胞において、Atg5 siRNAによってオートファジー不全を惹起すると、内皮間葉転化が生じた。同様の結果は、オートファジー阻害剤である3-メチルアデニン(3-MA)添加によっても、内皮間葉転化が生じた。さらに、Atg5 siRNAによってオートファジー不全に内皮細胞において、TGF-beta、TGF-beta receptor、リン酸化smad3の発現増加がみられた。以前から、TGF-beta-smad3経路の亢進は内皮間葉転化を惹起することが知られていたが、TGF-beta中和抗体を添加してもこの内皮間葉転化は抑制できない結果が得られた。また、smad3リン酸化抑制剤SIS3の添加によっても、同様に内皮間葉転化を抑制できなかった。そこで、オートファジー不全の血管内皮細胞において関連するヒトサイトカインを網羅的に解析すると、IL-6の発現亢進を見出した。次いで、同細胞にIL-6中和抗体を添加すると、内皮間葉転化が抑制されるとの新たな結果を得た。2)血管内皮特異的オートファジー不全マウスAtg5endoを作成した。そのマウスの血清IL-6はワイルドタイプのマウスと比べて高く、細胞実験と同様に内皮間葉転化が生じていた。さらに、高脂肪食負荷を行うと内皮間葉転化と顕著な腎線維化が生じている結果を得た。また、ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病内皮細胞特異的オートファージ―不全マウスにおいて、ワイルドタイプ糖尿病マウスと比べ、内皮間葉転化および上皮間葉転化の亢進と腎の線維化が増悪すること、つまり内皮オートファジー不全が尿細管上皮間葉化に関わっていた。
1: 当初の計画以上に進展している
内皮オートファジー不全が腎線維化を生じるとともに、新たに尿細管上皮細胞の間葉転化に関わっているとの新たな結果を得た。次年度には、どのような機構によって、内皮オートファジー不全が空間的に異なる尿細管細胞の上皮間葉転化を惹起したのかを解明する。
1)内皮オートファジー不全が腎線維化を生じるとともに、新たに尿細管上皮細胞の間葉転化に関わっているとの新たな結果が、どのような機構によって空間的に異なる尿細管細胞の上皮間葉転化を惹起したのかを解明する。さらに、内皮間葉転化が生じていた血管内皮オートファジー不全マウスにおいて得られた液性因子IL-6に着目して、IL-6中和抗体の投与によって高脂肪食、ストレプトゾトシン1型糖尿病マウスの腎線維化と内皮、上皮間葉転化が抑制されるか否かを検討する。2)糖尿病マウスの内皮細胞における遺伝子発現調節の網羅的解析を行う。各臓器の内皮細胞を単離後、RNAlaterに浸漬し、細胞破壊後RNeasy Lipid Tissue Mini Kitを用いてtotal RNAを抽出する。cDNA作成後ビオチン標識したcDNAをGeneChip Mouse Gene ST mRNA Array, もしくは抽出ラベルしたmicroRNAをmicroRNA array (Agilent)を用いて、それぞれ網羅的解析を行う。オートファジー機構制御に関係のあるmTOR signaling array(Full Moon BioSystems)を行い、中心となる細胞内シグナル変異を同定する。array解析で同定したシグナル分子に関しては、すべてのマウスサンプルを用いwestern blot法にて再確認する。すでに内皮間葉転化抑制効果をすでに確認して報告しているmiRNA let-7とmiRNA29に関しては、arrayの結果如何にかかわらず定量的PCRにて確認する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 備考 (1件)
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