研究課題/領域番号 |
16K15473
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
若林 孝一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50240768)
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研究分担者 |
丹治 邦和 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10271800)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シナプス / 認知症 / 神経変性疾患 / レビー小体病 / 多系統萎縮症 / シヌクレイン / オートファジー |
研究実績の概要 |
多くの神経変性疾患では疾患に特異的な分子が蓄積し、病態と密接に関連している。我々はシナプス蛋白であるαシヌクレインが蓄積し、運動障害や認知症を呈する疾患であるシヌクレイノパチー(パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症)の病態解析を進めてきた。その中で、細胞内分解システムの異常を見出し、このシステムを活性化させることにより、異常分子の蓄積を防ぐことを報告してきた。最近、自然糖であるトレハロースによる細胞内分解システム活性化の機序を明らかにするため、マイクロアレイ解析を行ったところ、樹状突起スパインの形成に関連する遺伝子群がトレハロース投与後早期に増加していることを見出した。そこで本研究では、シヌクレイノパチーにおける異常蛋白蓄積機構やオートファジー関連分子が病態に果たす役割を明らかにし、樹状突起スパインやオートファジーの活性化を可視化する方法の開発を行う。 本年度は、レビー小体病と多系統萎縮症を対象にオートファジー上流分子の動態について検討した。その結果、複数のオートファジー上流分子(ULK1、ULK2、VPS34、AMBRA1)がレビー小体に発現していること、AMBRA1は多系統萎縮症のグリア細胞および神経細胞内封入体にも発現していることを明らかにした。さらに、AMBRA1は正常および異常αシヌクレインと結合し、その分解に関わることを明らかにした。AMBRA1はレビー小体病と多系統萎縮症の治療法開発における標的分子となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シヌクレイノパチー(パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症)の病態に複数のオートファジー上流分子が関与していることが示された。我々は自然糖トレハロースが脳内オートファジーを活性化することを既に見出しており、脳内オートファジーの活性化により異常分子の蓄積を防ぐことができれば、シヌクレイノパチーの治療法開発にも通ずる。以上より、研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後もシヌクレイノパチーにおける異常蛋白蓄積機構やオートファジー関連分子が病態に果たす役割について研究を進める。さらに、脳内オートファジーの活性化は治療にもつながることから、効果的な脳内オートファジーの活性化手法(Brain Autophagy Activator)を開発中である。特に、脳透明化技術とオートファジー可視化マウスを組み合わせた形態観察により効率的にBrain Autophagy Activatorをスクリーニングできるが、従来の透明化手法ではオートファゴソーム結合分子が透明化の過程で分解されることが判明した。今後、膜成分を保ったまま可視化する方法の開発を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも試薬関係の予算が少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に使用する5,466円は翌年度の研究費と合わせ消耗品費として使用する。
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