研究課題
神経変性疾患では疾患に特異的な分子が蓄積し、病態と密接に関連している。我々はシナプス蛋白であるαシヌクレインが蓄積し、運動障害や認知症を呈する疾患であるシヌクレイノパチー(パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症、多系統萎縮症)の病態解析を進めてきた。その中で、細胞内分解システムの異常を見出し、このシステムを活性化させることにより、異常分子の蓄積を防ぐことを報告してきた。しかし、この細胞内分解システムの異常が、長い神経変性の結果起こったのか、病早期より生じているのかは明らかでない。そこで本年度は、PD患者(35例)および正常対照(23例)の末梢血単核球のオートファジーについて検討した。トランスクリプトーム解析では、PD群においてオートファジーの主要蛋白であるULK3、Atg2A、Atg4B、Atg5、Atg16L1、histone deacetylase 6のmRNAが有意に減少していた。ウエスタンブロット解析ならびに逆転写ポリメラーゼ連鎖反応では、オートファジーの開始に関わるULK1、VPS34、Beclin1、AMBRA1のうちULK1、Beclin1、AMBRA1が有意に上昇する一方で、VPS34、Beclin1、AMBRA1のmRNAは有意に減少していた。VPS34、Beclin1、AMBRA1はαシヌクレインのモノマーと正の相関を、ULK1、VPS34、Beclin1、AMBRA1はαシヌクレインのオリゴマーと正の相関を示した。さらに、αシヌクレインのオリゴマーはPDの重症度ならびに心臓交感神経の脱神経に相関した。PDの末梢血単核球におけるオートファジーの変化はPD剖検脳におけるオートファジーの変化を反映している可能性が示唆された。PDにおけるオートファジーの異常はPDの病早期より生じている可能性がある。
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