研究課題
封入体筋炎(sIBM)は原因不明で治療法が無く、病態解明に根ざした治療開発は重要な課題である。当科を中心にsIBMの全国的な臨床調査を行い高齢化に伴い患者数が増加してきていることを明らかにしている。本研究ではsIBM患者生検筋組織から分離することによりsIBM骨格筋細胞を採取し、筋収縮培養系を活用した新規病態モデルの確立をめざす。さらに次世代シークエンサーを用いた筋細胞およびエクソソ-ム分泌小胞の病態修飾因子のRNAseq解析を通じて、sIBM病態の全体像を明らかにしたい。動物モデル由来筋芽細胞でも検証し、創薬スクリーニング系を確立して病態に根ざした治療につなげることを目標として、研究を進めた。sIBMに関しては患者検体収集を行うと共に、臨床情報についてもまとめて論文化することができた。また患者血清における自己抗体の病態意義に関して、熊本大学との共同研究で論文を発表した。sIBMの臨床診断の時に必須である骨格筋生検の際に、患者同意を得た上で一部の骨格筋からCD56陽性の骨格筋芽細胞を分離・増殖・分化させた。これまでに5例のsIBM患者由来の筋芽細胞を樹立できた。また骨格筋に封入体形成を来すミオパチーの家系から慶應義塾大学の支援の下でiPS細胞を樹立した。未分化性・分化能・染色体異常が無いことを確認した。プロテアソーム機能不全仮説に基づくマウスモデルに関してもPax7Creの組織特異的発現抑制マウスの解析を進めており、本マウスでは筋再生が顕著に障害されることを明らかにしている。
2: おおむね順調に進展している
sIBMに関しては患者検体収集を行うと共に、臨床情報についてもまとめることで論文化することができた。一報は全国調査に基づく患者アンケートであり、sIBM患者が抱える医学的症候から社会的問題点についてまとめることができた。また、患者血清を用いた病態研究に関しても熊本大学との共同研究で論文化することができた。細胞樹立に関しては、まずsIBMの臨床診断の時に必須である骨格筋生検の際に、患者同意を得た上で一部の骨格筋からCD56陽性の骨格筋芽細胞を分離・増殖・分化させた。これまでに5例のsIBM患者由来の筋芽細胞を樹立することができた。また骨格筋に封入体形成を来すミオパチーの家系から慶應義塾大学の支援の下でiPS細胞を樹立した。未分化性・分化能・染色体異常が無いことを確認した。これらの細胞リソースの整備を行ってきており、平成29年度は表現型解析を進めていきたい。さらにプロテアソーム機能不全仮説に基づくマウスモデルに関してもPax7Creの組織特異的発現抑制マウスの解析を進めており、本マウスでは筋再生が顕著に障害されることを明らかにしており、成果を論文にまとめていきたい。
樹立した筋芽細胞・iPS細胞由来骨格筋に対して細胞培養下で酸化的ストレス等を付加することにより、疾患由来細胞に特有の表現型を同定し、薬剤スクリーニング系としての応用可能性を検討していく。hnRNPA1変異細胞に関しては、CLIPseqなども駆使し、病態の全体像を把握していく。プロテアソーム機能不全マウスについても細胞周期分子の異常を見出しており、論文発表へと結実させる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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