研究課題
本研究では「研究代表者が見出したClaudin-11タンパク質が中枢関門の密着結合形成に重要な役割を果たしており、多発性硬化症の中枢関門崩壊の原因分子である」という仮説を証明することを目的とした。ラットから脳毛細血管を単離し、独自の次世代型網羅的定量的プロテオミクス(改良型SWATH)によって網羅的探索を行った結果、全claudin familyの中でclaudin-5とclaudin-11のみのタンパク質発現が検出された。独自のQuantitative Targeted Absolute Proteomics (QTAP)法を適用した結果、claudin-11のタンパク質絶対発現量は、ラット及びヒト脳毛細血管において、claudin-5(従来から知られている血液脳関門の主要密着結合分子)と比較してそれぞれ1.0倍及び2.8倍多く、定量的な観点から(特にヒトで)claudin-11の重要性が示唆された。免疫組織学的解析によって、脳毛細血管内皮細胞だけでなく他の中枢関門を構成する脊髄毛細血管内皮細胞、脈絡叢上皮細胞およびクモ膜にも発現することが示された。Claudin-11発現の特異的ノックダウンによって、細胞膜非透過性物質であるFITC-dextranの細胞間透過性が上昇し、claudin-11が中枢の内皮系バリアー及び上皮系バリアーの両方の密着結合形成に寄与していることが示された。In vivoのヒトの血液脳関門におけるclaudin-11の寄与率はclaudin-5とほぼ同程度であると推定された。多発性硬化症の患者では脳毛細血管および脊髄毛細血管、多発性硬化症モデルマウスではそれらに加えてクモ膜において、claudin-11の発現低下が示された。結論として、claudin-11は複数の中枢関門の密着結合形成に重要な分子であり、その発現低下が多発性硬化症におけるそれら中枢関門の破綻の原因の一つであることが本研究によってはじめて明らかとなった。
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