研究課題/領域番号 |
16K15476
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
冨所 康志 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80447250)
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研究分担者 |
玉岡 晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50192183)
石井 一弘 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70323293)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症 / アルツハイマー病 / 診断指標 / 脳脊髄液 / Aβ |
研究実績の概要 |
脳脊髄液中の毒性Aβコンホマーが新たなアルツハイマー病の客観的かつ超早期の生化学的診断指標や超早期の治療標的となるか検討するため,少数例での検討を行った.臨床症状と頭部形態(MRI)・機能(脳血流シンチ)画像でアルツハイマー型認知症と診断され,これまでの脳脊髄液中の生化学的診断指標であるAβならびにタウ測定により診断を確認した10例と,同様に診断を確定したアルツハイマー病による軽度認知機能障害患者2例,および,対照神経疾患患者20例について検討した.対照神経疾患患者群はAβとタウの値により3群(1群:Aβ40/42比上昇なし,2群:Aβ40/42比上昇あり+タウ上昇なし,3群:Aβ40/42比上昇あり+タウ上昇あり)に分けた.それぞれの疾患群について脳脊髄液中の毒性Aβコンホマーオリゴマー量を特異抗体24B3によるELISA系を用いて測定し,アルツハイマー病による軽度認知機能障害群以外について,比較検討した.Aβ40/42比はアルツハイマー型認知症群,第2,3群対照脳脊髄液で上昇し,アルツハイマー型認知症群,第2群対照脳脊髄液で有意に上昇していた.毒性Aβコンホマーオリゴマー,Aβ40,毒性Aβコンホマーオリゴマー/Aβ40比では有意な差を認めなかった.毒性Aβコンホマーオリゴマー/Aβ42比は特に対照第2群で上昇が目立ったが,アルツハイマー型認知症群に対しては有意ではなかった.本検討で,対照第2群,第3群は前臨床期のアルツハイマー病合併例とみなすことができる.毒性Aβコンホマーオリゴマー/Aβ42比の上昇が前臨床期アルツハイマー病の病態を反映するものなのか,毒性Aβコンホマーオリゴマーが神経障害を実際のヒト脳で生じているのか,今後検討する必要がある. 尚,当研究にて脳脊髄液中Aβを調査した症例には,臨床症状等で興味深い症例が含まれた.その一部について別途症例報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルツハイマー型認知症と対照神経疾患例との比較検討で,毒性Aβコンホマーオリゴマー測定の診断的意義を見いだせなかった.当初の予想と異なり,認知症が完成した段階ではなく,ごく初期に病態にかかわっている可能性がある.その際の量的変化も予想より小さいか一過性である可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー型認知症と対照神経疾患例との比較検討で,毒性Aβコンホマーオリゴマー測定の診断的意義を見いだせなかった.当初の予想と異なり,認知症が完成した段階ではなく,ごく初期に病態にかかわっている可能性がある.その際の量的変化も予想より小さいか一過性である可能性がある.したがって,前臨床期のアルツハイマー病を合併した対照神経疾患例の数を増やしていくとともに,タウの測定結果との比較検討により,前臨床期などの極早期の段階で神経障害への関与があるかどうか明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に,耐震工事に伴う実験室の移動を予定より多くの回数を行うことを大学側から指示され,当初の計画に比べて研究がずれこんだ.その影響が昨年度にも及んだ. アルツハイマー型認知症患者の脳脊髄液中Aβとタウの調査を引き続き行い,生化学的に診断を確認する.対照神経疾患患者の脳脊髄液も同様に調査する.これら試料について毒性Aβコンホマーオリゴマーを引き続いて測定する.
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