研究課題
我々は、細胞質およびミトコンドリアtRNAのチオメチル化修飾欠損が、アジア型2型糖尿病やミトコンドリア病を引き起こすことを明らかにした。また、同修飾を代償する低分子化合物としてエペリゾンを見出した。今年度より、細胞質tRNA修飾が低下しているアジア型2型糖尿病患者に対して、同薬剤のコンパニオン診断薬としての有効性を検討する医師主導臨床試験を開始した。本薬剤は、ミトコンドリア病の発症を抑制することも期待できるが、ミトコンドリア内に導入されないことが明らかになった。そこで、本研究では、エペリゾンをミトコンドリア内に導入できる技術開発を行い、また同技術によりミトコンドリア病モデルマウスにエペリゾンを投与し、ミオパチーやてんかん、心機能低下などの表現型が改善できるか明らかにすることを目的として実施した。平成28年度は、以下の研究を行った。①.ミトコンドリア内導入シグナルペプチドの開発と同ペプチドを付加したリポソームの作製・・・Cdk5rap1のミトコンドリア局在シグナルに9個のアルギニンを付加した細胞膜通過性ペプチド(9R)を付加したペプチドを作製した。同ペプチドをマウス初代培養心筋、骨格筋および神経細胞に導入し、FITCシグナルを共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより、細胞内導入効率およびミトコンドリア内への局在について検討した。その結果、大部分はミトコンドリア内に局在することを確認した。さらに、リポソーム構成脂質として、DOPC:DOPG:DOGS-NTA-Ni:CH:DSPE-PEG2000を3:3:1:4:0.1モル比で混合し、逆相蒸発脱水法にてリポソームを作製し、Niとヒスチジンの結合により、同ペプチドを付加させたリポソームを作成することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に計画していたミトコンドリア内導入シグナルペプチドの開発と同ペプチドを付加したリポソームの作製を終了することができたので、おおむね順調に進展していると評価できた。
今後は、当初の計画通りエペリゾンを封入したリポソームを作製し、同リポソームのミトコンドリアへのエペリゾン送達効率を骨格筋、心筋、および神経細胞を用いて確認する。細胞での確認が終了したら、ミトコンドリア病マウスモデルを用いて、同様に薬剤送達効果について検討する。
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Nucl. Acid Res.
巻: 45 ページ: 435-445
http://kumamoto-physiology.jp