研究実績の概要 |
本年度は、化合物ライブラリーより3つに絞りこんだParkin活性化化合物(A, B, Cとする)に関して、ヒト培養細胞であるHeLa細胞、SH-SY5Y細胞、iPS細胞から分化させたドパミン神経を用いてその効果を評価した。 化合物Aは、HeLa細胞、ドパミン神経にて、ParkinおよびPINK1の下流と考えられるマイトファジー関連キナーゼTBK1のリン酸化、Parkinのミトコンドリア移行・ユビキチンリガーゼの活性化とParkinのミトコンドリア外膜基質、オートファジーレセプターの分解が認められた。PINK1の活性化に繋がるミトコンドリア膜電位への影響が認められたが、既知のミトコンドリア膜電位脱共役剤に比して軽微であり、PINK1の蓄積は検出されなかった。しかし、PINK1ノックアウト細胞ではその効果が認められなかったことから、化合物Aの分子標的はPINK1の上流であることが示唆された。一方、SH-SY5Y細胞では細胞毒性が認められ、細胞種依存性があることが明らかとなった。化合物Bは、HeLa細胞、SH-SY5Y細胞、ドパミン神経において有意な効果は認められなかった。化合物Cは、数十マイクロモルのオーダーにて、in vitroでParkinのユビキチンリガーゼ活性を活性化することが示唆された。 今後、化合物AはSH-SY5Y細胞において毒性が見られる原因の解明と、in vivoモデルとしてPINK1ノックアウトハエでのミトコンドリア機能への影響を評価していく予定である。化合物Cはその効果が弱く官能基の最適化が必要と判断され、in silicoにて誘導体の探索を進めている。
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