研究課題/領域番号 |
16K15485
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
斉藤 昌之 北海道大学, 獣医学研究科, 名誉教授 (80036441)
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研究分担者 |
松下 真美 天使大学, 看護栄養学部, 助教 (60517316)
岡松 優子 北海道大学, 獣医学研究科, 講師 (90527178)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | FDG-PET/CT / miRNA-92a |
研究実績の概要 |
褐色脂肪は全身エネルギー消費や体脂肪量の調節に寄与するので、肥満や関連代謝疾患の対策ターゲットとして注目されている。ヒト褐色脂肪の評価はFDG-PET/CTによるのが一般的であるが、放射線被曝や高額な検査費用のため利用に制約が多い。本研究の目的は、褐色脂肪から分泌されるエクソソームmiRNAに注目して、この血中濃度とFDG-PET/CTで評価した活性を比較解析し、血中miRNAを指標とするヒト褐色脂肪の簡便な評価法を開発することである。これに沿って、以下の通り研究を実施し一定の成果を得た。 1、研究代表者が既にFDG-PET/CT法で褐色脂肪活性を評価した健常男性8名(高活性者4名と低活性者4名)を被験者として、彼らから血液サンプルを採取・保存した。 2、血液サンプルから分離した血清を用いて、エクソソームを調製しmiRNAを抽出する方法を検討し、その定量法と併せて再現性の良い方法を確立した。 3、miRNAをマイクロアレイ解析で網羅的に探索するに当たっての予備検討として、比較的多量に存在するエクソソームmiRNA122, 92a, 451, 885について簡便なPCR法によって定量した結果、92aが高活性者で低い傾向が認められた。なおこれらのmiRNAについては、寒冷刺激2時間によって褐色脂肪を活性化しても特に変化は見られなかった。また、エクソソームを分離せずに血清から直接miRNAを抽出した場合でも同様の傾向が認められた。 4、これらの結果から、血中miRNA(特に92a)がヒト褐色脂肪活性を反映する指標となる可能性が示唆されたので、さらに例数を増やして確定すると共に、より広範に探索するためのマイクロアレイ解析に向けて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、標準法であるFDG-PET/CTで褐色脂肪活性を評価した被験者のリクルートと血液サンプルの採取が必須であるが、研究代表者が別の研究でリクルートした被験者8名の協力が得られ、血液サンプルを十分量採取することができた。そのサンプルを用いて、エクソソームmiRNAの分離定量法を確立し、かついくつかの代表的分子種について褐色脂肪活性との関係を解析することができたので、次年度の研究実施への見通しが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
褐色脂肪活性を反映する血中指標としてのエクソソームmiRNAの意義を明らかにするために、前年度の成果を踏まえて以下の実験を行う。 1、血中エクソソームmiRNA(特に92a)がヒト褐色脂肪活性を反映する指標となる可能性が示唆されたので、新たな被験者10名をリクルートして褐色脂肪活性をFDG-PET/CTによって評価し、血中miRNA92aとの相関を調べる。 2、マイクロアレイ解析によってmiRNA分子種を広範に探索し、褐色脂肪活性と相関する分子種を選抜する。 3、選抜された候補分子種について、すべての被験者18名の血中濃度をPCR法で測定する。さらに、褐色脂肪組織や血中での発現・動態をマウスで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者の褐色脂肪活性を標準法であるFDG-PET/CT法で評価する計画であったが、研究代表者が別の研究において既に同法で活性を評価済みの被験者の協力が得られ、血液サンプルを採取することができたので、今年度は当初計上していたFDG-PET/CTの検査委託経費を使用する必要がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は新たな被験者をリクルートしてFDG-PET/CT検査を行う必要があるので、その委託経費に充当する。
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