研究実績の概要 |
褐色脂肪組織(以下褐色脂肪)は、全身エネルギー消費や体脂肪量の調節に寄与するので、肥満や関連疾患の予防・治療ターゲットとして注目されている。ヒトの褐色脂肪の評価はがんの画像診断法であるFDG-PET/CT によっているが、高額な検査費用と放射線被爆のため利用に制約が多い。本研究では、簡便・安価・低侵襲なヒト褐色脂肪の評価法を開発することを目的に、以下の通り成人血中のエクソソームmiRNAを網羅的に分析・定量し、FDG-PET/CT で評価した褐色脂肪と相関する特異的miRNAを同定して、血中マーカーとしての有用性を検討した。 1、研究代表者が既にFDG-PET/CT法で褐色脂肪活性を評価した健常男性8名(高活性者4名、低活性者4名)から得た血清サンプルからエクソソームを調製しmiRNAを抽出して網羅的アレイ解析を行った。その結果、濃度が一定レベル以上でかつ高活性者と低活性者で1.5倍以上異なる可能性のあるmiRNAが11種(7a, 92a, 451, 122-5p, 125b, 557, 3148, 885, 6776, 7109, 4673)選抜された。そこでこれら11種のmiRNAについてPCR法による測定法を確立して定量したところ、高活性者ではmiRNA122-5p濃度が低い傾向が認められた。 2、上記の結果を確定するために、最終年度でさらに被験者を総数40名(高活性者20名、低活性者20名)に増やしてPCR法で定量したところ、miRNA122-5p濃度が高活性者では低活性者に比べて有意に低値であることが判明した。多変量解析の結果、この褐色脂肪活性の影響は年齢や肥満度などとは独立であることも確認された。 3、これらの結果から、血中エクソソームmiRNA122-5pが褐色脂肪活性を反映するマーカーとなりうることが明らかになった。
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