研究課題
我々は膵ランゲルハンス島への迷走神経シグナルを含む臓器間神経ネットワークがインスリン分泌や膵β細胞量の調節に重要な役割を果たしていることを発見した。膵への迷走神経は膵内の迷走神経節へ投射し、迷走神経節から2次ニューロンにシグナルと乗り換えて、そのシグナルが標的部位に届けられる。そこで、膵内迷走神経節の解剖学的・生化学的解析、特に膵ランゲルハンス島との関連について検討することを提案した。前年度は、まず解剖学的解析として、CUBIC法による透明化技術を駆使して、膵迷走神経節の三次元的な位置情報の解析を行った。その結果、膵内迷走神経節の多くは膵島に近接して存在していることが明らかとなった。さらに、膵内迷走神経節が近接する膵ランゲルハンス島は、そうでないものに比べ有意に大きかった。本年度は、遺伝子工学的な手法を用いて、迷走神経可視化マウスを作製した。この膵臓を詳細に解析することにより、膵迷走神経が膵管に沿って走行し分枝した迷走神経枝が膵管近辺に房状に存在する膵ランゲルハンス島に近接する迷走神経節へと投射している像を3次元的に描出することに成功した。さらに、レーザーマイクロダイセクション法を用い、迷走神経節を回収しこの細胞から得られたmRNAを用い、迷走神経節に発現するタンパクを解析し、すべての遺伝子のリスト化に成功した。これらの成果は、膵β細胞からのインスリン分泌や細胞数が迷走神経により制御されていることを示すものであると考えられ、迷走神経機能の調節による糖尿病の治療開発に向けての基盤となるものと考えられる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 11件)
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