研究課題
私たちの個体は幹細胞から新規細胞が供給され、古い細胞は取り除かれ、新陳代謝し、維持される。膵ベータ細胞も加齢に伴い増殖能を失い、またインスリン分泌能が低下するとされる。2型糖尿病では、インスリン抵抗性とともに、インスリン分泌が相対的に不足し、ベータ細胞が疲弊していく。この老化、疲弊の根本には、エピゲノム修飾が関わっていると考える。そこで本研究では、DNAメチル化とnon-coding RNAに着目し、年齢やイベントをきっかけにメチル化が起こるメカニズムの解明を目指す。またメチル化を抑制する方策を同定する。申請者は、リプログラミングの技術を用いて、ヒトプライム型ES/iPS細胞をより未分化なヒトナイーブ型iPS細胞に若返らせることに成功した。この二つの多能性幹細胞における最も注目すべき違いの一つにDNAメチル化がある。ナイーブ型ではヒトナイーブ型iPS細胞は脱メチル化が進んでいき、低い状態となる。このナイーブ型幹細胞における脱メチル化のメカニズムを解析し、理解する。同時にここで得られた所見を個体や疾患におけるメチル化の進行と比較し、不要なメチル化を抑える手法の確立を目指す。本年度は、miRNAの発現パターンに関し、ナイーブ型多能性幹細胞およびプライム型、さらにはナイーブ型から分化させた時に発現がどのようになるか、miRNAアレイを用いて網羅的解析を行った。同時に、遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析するため、遺伝子発現アレイも行った。現在、miRNAと遺伝子、メチル化の状態を関係づけるべくアレイ、RNAシークエンスも行い、基盤データをそろえることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに、ヒトナイーブ型多能性幹細胞とプライム型多能性幹細胞の各々からマイクロアレイを利用し、miRNAを網羅的に解析することに成功した。今後miRNAのうち、メチル化に関連するmiRNAを取り出し、メチル化を抑制するあるいは脱メチル化を誘導するメカニズムを明らかにする。
本年度も昨年度から引き続き、ヒトナイーブ型およびプライム型多能性幹細胞をモデルとし、メチル化、脱メチル化の機構を解析する。ヒトナイーブ型多能性幹細胞とプライム型多能性幹細胞の各々からマイクロアレイを利用し網羅的に解析したmiRNAプロファイルを本年度は解析する。ナイーブ型に特異的に発現したmiRNAをアレイから抽出し、その後、遺伝子発現マイクロアレイ、RNAシークエンス、全ゲノムBS-DNAシークエンスのデータと比較し、DNAメチル化、脱メチル化に関連することが予想されるmiRNAを同定する。同定したmiRNAの阻害剤、あるいはmimicを用いて、DNAメチル化が実際に修飾されるかナイーブ型とプライム型多能性幹細胞をモデルとして、解析する。多能性幹細胞を利用し、得られたデータから、膵β細胞を含む体細胞、さらには個体へと研究を発展させる。このため、試験管内でヒトナイーブ型多能性幹細胞およびプライム型多能性幹細胞から既報の誘導方法を利用し、内胚葉から順を追って膵β細胞を分化誘導する。特にグルコース応答性にインスリン分泌能がしっかりと計測できる系の樹立を目指す。
本年度、予定購入品目を通常価格より割安の価格で得ることができた。特にマイクロアレイの網羅的解析を格安で実施し節約できたため、次年度に持ち越せることとなった。
現在の網羅的解析から得られた候補miRNAに対する阻害剤、mimicを利用する。フローサイトメトリーを利用した解析が、ナイーブ型の樹立に使用されつつあり、本研究においても、フローサイトメトリーを利用し、解析することとし、抗体購入およびフローサイトメトリーに関連する費用として支出する。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: -
doi:10.1038/srep45285