研究課題
食塩感受性高血圧に関わる糖質・鉱質コルチコイド依存性ナトリウム輸送系の解明を目的として、今年度は①遠位尿細管分離法の確立、②尿細管間在細胞特異的MR欠損マウスの作出とフェノタイプの解析、③間在細胞でナトリウム輸送に関わるペンドリンの活性化機構の解析を進めた。遠位細胞特異的な遺伝子変化を明らかにするためにdolichos lectinで染色した単一細胞のソーティングの系を確立させ、病態での解析を開始した。また、間在細胞の検討を進めるためAtp6v1b1-EGFPマウスからEGFP陽性細胞を分離し、間在細胞の濃縮ができることを確認した。さらにMR-floxおよびAtp6v1b1-creマウスを交配しMRflox/flox; Atp6v1b1-cre+/-マウスを作成、間在細胞におけるMR欠損を免疫染色にて確認した。アンジオテンシンII負荷などの刺激を行い、血圧および酸塩基平衡の異常についての検討を進めている。間在細胞ではアンジオテンシンII負荷によりMR-S843の脱リン酸化が生じるが、アンジオテンシンIIによって産生が刺激されるアルドステロンの存在がペンドリンの活性化に関わるか明確な証拠がない。そこで副腎摘出マウスを用いた検討を進めた結果、ペンドリンの活性化にはアルドステロンの存在が必須であることが明らかになった。この結果は、副腎摘出したマウスでも活性化がみられたNCCと対照的であった。遠位尿細管でNa再吸収に関わるNCCとペンドリンはほぼ並行して調節されることが多いが今回の検討により、独立した経路の存在が明らかになった。さらに、AME症候群の原因遺伝子であるHSD11b2の腎臓での機能を明らかにするために腎臓特異的KOマウスを作成した。本マウスでは腎臓でのMR刺激を介して高血圧を発症することが明らかになった(Hypertension 2017 in press)。
2: おおむね順調に進展している
遠位尿細管細胞の分離方法が確立でき病態での遺伝子変化の解析を進めることができた。また、間在細胞選択的なMR欠損マウスの作出に成功し、病態での解析を開始し、今後ソーターを用いた解析を予定している。また、ペンドリン活性化にNCCの活性化と異なる機構が存在することが明らかになり、酸塩基異常を伴う病態ではペンドリンとNCCの調節に乖離がみられる可能性が示唆される。さらに腎臓でのHSD11bの血圧調節での役割を明らかにすることができた。
作出した間在細胞特異的MR欠損マウスとネフロンMR欠損マウスを用いて、ペンドリンの活性化機構の検討を行う。また、アンジオテンシンIIおよびアルドステロン負荷モデルでのこれらのマウスの血圧、酸塩基平衡での変化を調べて、間在細胞MRの病態での意義を明らかにする。さらに、今年度に確立させた遠位尿細管分離法を用いて、これらの病態で遠位尿細管特異的に変化する遺伝子の抽出をして、MRの新たな下流経路の同定につなげる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
Hypertension
巻: - ページ: in press
10.1161/HYPERTENSIONAHA.116.08519
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