研究課題
28年度は乳がん・前立腺がんにおいて、ホルモン治療抵抗性モデルがん細胞とホルモン感受性がん細胞との比較から、がん病態進展にかかわる非コードRNAのうち、特にホルモン受容体のゲノム結合領域近傍に位置するアンチセンスRNAに着目し、がん細胞のRNAシーケンスデータからホルモン応答性に発現上昇する長鎖非コードRNA候補を複数同定した。また、乳がん・前立腺がんの臨床検体におけるRNAシーケンスデータから、それらの非コードRNAが発現が亢進している症例が多く存在することを見出し、がん診断バイオマーカーとしての可能性を示すことができた。注目される非コードRNAに対して、特異的なsiRNAの作製を行い、RNAレベルでの発現抑制が得られることを確認し、がん細胞の増殖性や移動性、細胞周期に対する作用を検討した。いくつかのsiRNAについては、ホルモン受容体のプロモーター活性解析やクロマチン免疫沈降アッセイから、エピゲノム作用に直接作用する可能性が示された。がん細胞からのエクソソーム分離については、超遠心を用いて濃縮したエクソソーム試料において、マーカー蛋白質やがん細胞で過剰発現する蛋白質の発現を、ウエスタン法を用いて確認することに成功した。さらに、がん由来のエクソソームを腫瘍免疫にかかわるT細胞系細胞に取り込ませ、元となるがん細胞の性質により、T細胞系の細胞傷害性にかかわる遺伝子の発現が調節されることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
がん細胞から超遠心法を用いてエクソソームを抽出し、エクソソームマーカー蛋白質の発現を指標に、エクソソームを濃縮できる手法が確立し、さらにがん由来のエクソソームをがん微小環境にかかわる免疫系細胞等へ作用させる実験が可能となった。
各種病態のがん細胞からのエクソソーム抽出を行い、そこに内包される非コードRNAの同定と機能解析を行って、がん病態におけるエクソソーム由来の非コードRNAの作用を明らかにする。研究代表者と研究分担者が注目している乳がんと前立腺がんの非コードRNAについても、がん細胞での過剰発現および発現抑制を行った場合に、そこから分離されるエクソソームによってがん微小環境の細胞がどのように影響を受けるかについても解析を行う。
次年度の効率的な研究推進のため、試薬・消耗品等の物品費、旅費と学会参加費、人件費に支出するための必要が出てきたため。
試薬・消耗品等の物品費を主体に、旅費とその他としての学会参加費、人件費に使用予定である。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.saitama-med.ac.jp/genome/Div02_GRST/index.html