研究課題
造血特異的にPcgf1との結合ドメインを欠損するBcorΔE9-10マウスの解析を行った。CD45.2由来の野生型(WT)及びΔE9-10マウスの総骨髄細胞5x106個をドナー細胞とし、致死量の放射線照射を行ったCD45.1由来のレシピエントマウスに移植した。生着後タモキシフェン誘導性に造血細胞特異的に遺伝子を欠損させ解析を行った。タモキシフェン投与後7ヶ月間の観察期間の内、ΔE9-10マウスの65%がT細胞性急性リンパ芽球性白血病(acute T-cell lymphoblastic leukemia, T-ALL)を発症した。T-ALL発症マウスではリガンド非依存的なNOTCH1の活性化を認め、これは昨年我々の研究室が報告した、Bcor遺伝子のBCL-6との結合ドメインをコードするエクソン4を欠損させたマウス(ΔE4マウス)におけるT-ALLと同様であった(Tanaka et.al. J. Exp. Med. 2017;214:2901-2913)。またΔE9-10マウスはΔE4マウスと同様にB細胞減少に起因する白血球減少を呈した一方で、ΔE9-10マウス特異的に大球性貧血と血小板増多を認めた。タモキシフェン投与3ヶ月時点で骨髄を解析すると、総骨髄細胞数は保たれているものの造血幹細胞の絶対数は著減していた。しかし顆粒球マクロファージ前駆細胞の絶対数は保たれていた。このことからΔE9-10マウスでは相対的に骨髄球系細胞への造血が亢進していることが示唆された。しかし骨髄球系の疾患発症には至らず、これは病態進行前にT-ALLを発症し死亡することが原因と思われた。そこで次にBCORと同時変異が報告されているTet2との複合欠損マウスを作成し解析を継続中である。
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