研究実績の概要 |
造血幹細胞は、生体中の全血液細胞を生み出すことができる能力と、多分化能を保ったまま増殖する能力を兼ね揃えた組織幹細胞である。造血幹細胞が他の幹細胞に先立って研究が進められたのは、生体から容易に分離することが可能であったことに加え、放射線を照射したマウスを用いることで可能となった造血幹細胞移植という幹細胞の能力を評価する実験系が存在したからに他ならない。しかし一方で、生理的条件下における造血幹細胞の分子機構、さらには造血幹細胞が骨髄中でどのように振る舞っているかはほとんど明らかになっていない。申請者は、上記のような問題点を解決するために、定常状態である生体内における造血幹細胞特異的な遺伝子導入法システムを持つ動物を作成することで、造血幹細胞の動態解析および自己複製と分化の制御機構を解明することを目的とし概ねの目的を達成した。具体的には、幹細胞特異的な発現を示すCK7遺伝子座の終止コドン部分に、自己切断ペプチドT2AにつないだTVAをコードする配列を挿入したCK7-TVA knock-in ES細胞を作製した。続いてCK7-TVA knock-in ES細胞をマウス胚盤胞に注入し、キメラマウスを得た。キメラマウスを野生型マウスと掛け合わせ、CK7-TVA knock-in マウスの作製に成功し、解析を行った結果を2017年に論文として報告した(Tajima et al., 2017 Scientific reports)。
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