研究課題
ストレス顆粒はストレスによって一過性に誘導される細胞質内の複合体である。研究代表者は、ストレス顆粒がストレスによる活性酸素の産生とアポトーシスを抑制すること、この抑制にUSP10およびG3BP1蛋白が関与することを報告した。さらに、G3BP1のみならず、G3BP2がストレス顆粒の形成に関与することを報告した。本研究では、USP10, G3BP1、G3BP2およびストレス顆粒による活性酸素制御の分子機構および、USP10、G3BP1およびG3BP2欠損マウスを用いて、ストレス顆粒がどのような生体内機能に関与するのかを明らかにする。1)全身性のUSP10欠損マウスは造血不全を発症した。この造血不全は造血幹細胞のアポトーシスによることが明らかになった。SCL(stem cell factor)が造血幹細胞のアポトーシスを抑制するが、この抑制は、USP10欠損により低下した。USP10変異体を用いた解析から、USP10の脱ユビキチン化酵素活性がアポトーシスの抑制に必須であることが示された。2)脳特異的USP10欠損マウスを樹立した。病態解析を進めている。3)G3BP1欠損マウスおよびG3BP2欠損マウスの作製を進めた。G3BP1マウスはヘテロマウスを樹立した。G3BP2欠損マウスもヘテロ欠損マウスの樹立の直前まで進んだ。これらのマウスを解析することにより、ストレス顆粒、G3BP1,G3BP2およびUSP10の活性酸素産生における生体内機能を明らかにする予定である。4)USP10が蛋白凝集体形成を促進することが示唆された。すなわち、USP10を過剰発現すると、ユビキチン化蛋白の凝集が亢進した。逆に、USP10をノックダウンするとユビキチン化蛋白の凝集が低下した。これらの結果はUSP10およびストレス顆粒がユビキチン化蛋白の凝集に関与することを示唆している。
3: やや遅れている
G3BP1欠損マウスとG3BP2欠損マウスの作製が少し遅れている。
1)G3BP1, G3BP2欠損マウスの作成を進める。平成30年度からG3BP1とG3BP2欠損マウスの病態解析を行う予定である。2)脳特異的USP10欠損マウスの病態解析を進める。3)USP10による蛋白凝集と活性酸素の制御機構を解析する。4)USP10の新しい結合蛋白を同定している。これらの機能解析を通して、ストレス顆粒、G3BP1, G3BP2およびUSP10の活性酸素制御における作用機構を明らかにする。
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