研究課題
アトピー型喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の罹患率は30%を越え、今や国民病ともいえる状態にある。自然緩解することは稀であり、治療継続による経済的損失は大きく、学習障害、睡眠障害、労働生産性の低下等、社会的損失も計り知れない。多くの研究が行われているが未だアレルギー疾患の根本的治療法は確立されておらず、新規治療戦略の開発が急務である。抗原特異的IgEが病態に深く関与することは、抗IgE抗体(オマリズマブ)の有効性より明らかであるが、オマリズマブは高価であり、費用対効果に問題がある。そこで本申請研究では、IgE産生細胞、或いはIgE産生細胞へと分化するIgG1産生細胞をIgA産生細胞にクラススイッチ誘導する方法を開発し、アレルギー疾患の新規治療戦略開発の基盤を構築することを目的とした。平成28年度は喘息モデルマウスの炎症局所におけるIgE産生細胞及びIgA産生細胞のクラススイッチ誘導の起源を解析し、IgA産生細胞の誘導条件の至適化、及びその分子メカニズムの解明を目指した。しかし、通常の卵白アルブミンの腹腔内感作―経気道チャレンジの実験系においては、気道から十分な数のIgE産生細胞、及びIgA産生細胞を得ることができなかった。そのため、卵白アルブミン特異的なTCRトランスジェニックマウスの細胞を移入する系にてその克服を目指したが、この系においても遺伝子発現を網羅的に行うのに十分な細胞を単離することは困難であった。そこで現在、入手したIgEレポーターマウスのコロニーを拡大し、レポーター発現によりIgE産生細胞を単離するシステムを立ち上げている。
2: おおむね順調に進展している
in vivoから十分な数のIgE産生細胞を得ることには未だ成功していないが、既に新たな実験系の立ち上げを行っており、この点に関しては、想定内の進捗状況である。一方、in vitroのIgE産生の実験系に関しては既に至適条件を見出しており、解析が順調に進んでいる。
IgEレポーターマウスなど、トラブルを乗り越えるためのツールは既に入手しており、この方向で研究を推進する予定である。さらなる問題が発生する可能性もあるが、柔軟に対応し、問題を克服したい。
本年度の研究においてIgE産生細胞からRNA シーケンス, CHIP シーケンス等、網羅的解析を行う予定であったが、解析を行うに十分な細胞数が得られなかったため、その解析を次年度に持ち越したため。
前年度の予算に計上していたIgE産生細胞からRNA シーケンス, CHIP シーケンス等、網羅的解析を行う予定のため
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Immunol Rev
巻: 未定 ページ: in press
not determined
J. Allergy Clin. Immunol
巻: 139 ページ: in press
doi: 10.1016/j.jaci.2016.08.022.
Arthritis Rheumatol
巻: 68 ページ: 713-23
doi: 10.1016/j.jaci.2016.10.047.