アトピー型喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の罹患率は30%を越え、今や国民病ともいえる状態にある。多くの研究が行われているが未だアレルギー疾患の根本的治療法は確立されておらず、新規治療戦略の開発が急務である。抗原特異的IgEが病態に深く関与することは、オマリズマブの有効性より明らかであるが、オマリズマブは高価であり、費用対効果に問題がある。そこで本申請研究では、IgE産生細胞、或いはIgE産生細胞へと分化するIgG1産生細胞をIgA産生細胞にクラススイッチ誘導する方法を開発し、アレルギー疾患の新規治療戦略開発の基盤を構築することを目的とした。 平成29年度はBrightbillらが開発したC57BL/6背景のIgE GFPノックインマウス(以下IgEレポーターマウス)を用いてIgE産生細胞からIgA産生細胞へのクラススイッチ誘導が可能か否かを解析した。IgEレポーターマウスの脾臓からCD19陽性細胞をMACSを用いて分離し、IgE誘導条件(LPS+IL-4)、或いはIgA誘導条件(LPS+IL-4+IL-5+April+Baff)で4日間培養し、IgE産生(GFP陽性)細胞、IgA産生細胞をFACSで解析した。その結果、IgE誘導条件下では、GFP陽性IgD陰性B細胞が9%程度検出され、一方IgA誘導条件下では、GFP陰性IgA陽性B細胞が4%程度検出さた。CD19陽性細胞をIgE誘導条件下で4日間培養後、IgA誘導条件下で培養し、IgAへのクラススイッチを検討したが、GFP陽性IgA陽性B細胞は殆ど検出されなかった。IgEレポーターマウスを用いることにより、IgE産生B細胞を高感度で検出することが可能となったが、IgA産生B細胞への分化誘導を分子レベルで解析するにはIgA産生への分化誘導率が不十分であり、培養条件の更なる改良が必要である。
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