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2016 年度 実施状況報告書

抑制性サイトカインを産生する新規制御性T細胞の解析による自己免疫制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K15510
研究機関東京大学

研究代表者

藤尾 圭志  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70401114)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード制御性T細胞 / TGF-beta3 / LAG3 / Egr2
研究実績の概要

申請者らは、IL-10産生性CD4陽性CD25陰性LAG3陽性Egr2陽性制御性T細胞(LAG3 Treg)がTGF-β3産生を介してB細胞機能を抑制することを報告している。本課題では、B細胞に対するTGF-β3の作用機構を解明し、マウスでLAG3 Treg及びTGF-β3を欠損した際に生ずる病態を解析することで、新たな自己免疫疾患治療戦略の確立を目指す。平成28年度は以下の検討を行った。
1.TGF-β3による抗体産生抑制メカニズムの解析
TLRを介したシグナルは、自己免疫疾患の病態形成に深く関与している。申請者らはこれまでに、TLR刺激下でTGF-β3およびIL-10は単独では抗体産生促進に働くが、共存することで強力な抑制効果を発揮することを同定している。近年オートファジーが形質細胞分化、維持において中心的な役割を果たしていることが報告されており、申請者らは、TGF-β3およびIL-10のLPS刺激B細胞への作用とオートファジーの関連につき、LC-3 GFPマウスB細胞に発現するLC-3IIを指標として評価した。その結果、TGF-β3は単独投与においてオートファジーを強力に促進するが、IL-10が共存することにより抑制され、オートファジー促進剤である3-メチルアデニンが加わることで、TGF-β3による抗体産生促進は有意に抑制されるという結果を得た。
2. LAG3 TregによるTGF-β3産生の意義の解明
申請者らが作製したEgr2プロモーター下にジフテリアトキシン(DTX)レセプター(DTR)とGFPの融合蛋白を発現するEgr2-GFP-DTRマウスのDTX処理の有無における、OVA免疫に対する免疫応答につき検討を行った。その結果、DTX処理によりOVA IgG産生は著明に亢進したが、免疫と同時期に野生型のLAG3 Tregを移入することで液性免疫応答亢進は解除された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、抗体産生制御機構におけるLAG3 Tregの役割および、TGF-β3による抗体産生制御メカニズムに関与するシグナル伝達機構を明確にすることを目標とした。上述の如く、定常状態において転写因子Egr2を特異的に発現するLAG3 TregをEgr2-GFP-DTRマウスを利用してEgr2のacute ablationする実験系を構築し、LAG3 Tregが抗原特異的免疫応答制御機構において中心的役割を果たしていることを示した。また、LC-3 GFPマウスを用いた実験系を用いて、TGF-β3およびIL-10によるTLR刺激B細胞制御におけるオートファジー制御の重要性を明らかにした。以上の結果は当初の目標を達成しており、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

H29年度は、TGF-β3を介するB細胞抑制に関わるシグナル伝達機構および、LAG3 TregにおけるTGF-β3産生の自己免疫疾患発症抑制における役割につき、より詳細な検討を行う予定である。具体的には以下の実験を行う。
1.TGF-β3による抗体産生抑制メカニズムの解析
平成28年度において得られたTGF-β3によるB細胞抑制機構につき、ヒトB細胞を用いて検討し、その抑制機序の異同を明らかとする。
2. LAG3 TregによるTGF-β3産生の意義の解明
LAG3 TregはTGF-β3だけではなく、SLE患者のCD4陽性T細胞においてcell type specific eQTL (expression Quantitative Trait Locus)効果を認めるJazf1遺伝子を特異的に高発現している。今後は、申請者らが作製したTGFb3 floxedマウスにJazf1 Creマウスを交配することで、LAG3 Treg上のTGF-β3を除去した際の液性免疫応答修飾やループス様病態の出現を経時的に評価する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Identification of tonsillar CD4+CD25-LAG3+ T cells as naturally occurring IL-10-producing regulatory T cells in human lymphoid tissue.2017

    • 著者名/発表者名
      Sumitomo S, Nakachi S, Okamura T, Tsuchida Y, Kato R, Shoda H, Furukawa A, Kitahara N, Kondo K, Yamasoba T, Yamamoto K, Fujio K.
    • 雑誌名

      J Autoimmun.

      巻: 76 ページ: 78-84

    • DOI

      10.1016/j.jaut.2016.09.005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TGF-β3 Inhibits Antibody Production by Human B Cells.2017

    • 著者名/発表者名
      Tsuchida Y, Sumitomo S, Ishigaki K, Suzuki A, Kochi Y, Tsuchiya H, Ota M, Komai T, Inoue M, Morita K, Okamura T, Yamamoto K, Fujio K.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 12 ページ: 1-16

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0169646

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Revisiting the regulatory roles of the TGF-β family of cytokines.2016

    • 著者名/発表者名
      Fujio K, Komai T, Inoue M, Morita K, Okamura T, Yamamoto K.
    • 雑誌名

      Autoimmun Rev.

      巻: 15 ページ: 917-922

    • DOI

      10.2177/jsci.39.51.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Therapeutic potential of regulatory cytokines that target B cells.2016

    • 著者名/発表者名
      Fujio K, Okamura T, Sumitomo S, Yamamoto K.
    • 雑誌名

      Int Immunol.

      巻: 28 ページ: 189-195

    • DOI

      10.1093/intimm/dxv069.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Emerging roles of Egr2 and Egr3 in the control of systemic autoimmunity.2016

    • 著者名/発表者名
      Morita K, Okamura T, Sumitomo S, Iwasaki Y, Fujio K, Yamamoto K.
    • 雑誌名

      Rheumatology (Oxford).

      巻: 55 ページ: 76-81

    • DOI

      10.1093/rheumatology/kew342

    • 査読あり
  • [学会発表] B細胞を抑制するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞2016

    • 著者名/発表者名
      藤尾圭志、岡村僚久、駒井俊彦、井上眞璃子、森田薫、住友秀次、山本一彦
    • 学会等名
      第60回 日本リウマチ学会総会・学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2016-04-21 – 2016-04-23
    • 招待講演
  • [学会発表] TGF-β3およびIL-10による協調性液性免疫制御機構の解明2016

    • 著者名/発表者名
      井上眞璃子、岡村僚久、駒井俊彦、森田薫、照屋周造、岩崎由希子、住友秀次、山本一彦、藤尾圭志
    • 学会等名
      第60回 日本リウマチ学会総会・学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2016-04-21 – 2016-04-23
  • [備考] 東京大学医学部附属病院 アレルギーリウマチ内科 第18研究室

    • URL

      http://plaza.umin.ac.jp/areriu18/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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