研究課題
申請者らは、IL-10産生性CD4陽性CD25陰性LAG3陽性Egr2陽性制御性T細胞(LAG3 Treg)がTGF-β3産生を介してB細胞機能を抑制することを報告している。本課題では、B細胞に対するTGF-β3の作用機構を解明し、マウスでLAG3 Treg及びTGF-β3を欠損した際に生ずる病態を解析することで、新たな自己免疫疾患治療戦略の確立を目指す。平成28年度は以下の検討を行った。1.TGF-β3による抗体産生抑制メカニズムの解析TLRを介したシグナルは、自己免疫疾患の病態形成に深く関与している。申請者らはこれまでに、TLR刺激下でTGF-β3およびIL-10は単独では抗体産生促進に働くが、共存することで強力な抑制効果を発揮することを同定している。近年オートファジーが形質細胞分化、維持において中心的な役割を果たしていることが報告されており、申請者らは、TGF-β3およびIL-10のLPS刺激B細胞への作用とオートファジーの関連につき、LC-3 GFPマウスB細胞に発現するLC-3IIを指標として評価した。その結果、TGF-β3は単独投与においてオートファジーを強力に促進するが、IL-10が共存することにより抑制され、オートファジー促進剤である3-メチルアデニンが加わることで、TGF-β3による抗体産生促進は有意に抑制されるという結果を得た。2. LAG3 TregによるTGF-β3産生の意義の解明申請者らが作製したEgr2プロモーター下にジフテリアトキシン(DTX)レセプター(DTR)とGFPの融合蛋白を発現するEgr2-GFP-DTRマウスのDTX処理の有無における、OVA免疫に対する免疫応答につき検討を行った。その結果、DTX処理によりOVA IgG産生は著明に亢進したが、免疫と同時期に野生型のLAG3 Tregを移入することで液性免疫応答亢進は解除された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、抗体産生制御機構におけるLAG3 Tregの役割および、TGF-β3による抗体産生制御メカニズムに関与するシグナル伝達機構を明確にすることを目標とした。上述の如く、定常状態において転写因子Egr2を特異的に発現するLAG3 TregをEgr2-GFP-DTRマウスを利用してEgr2のacute ablationする実験系を構築し、LAG3 Tregが抗原特異的免疫応答制御機構において中心的役割を果たしていることを示した。また、LC-3 GFPマウスを用いた実験系を用いて、TGF-β3およびIL-10によるTLR刺激B細胞制御におけるオートファジー制御の重要性を明らかにした。以上の結果は当初の目標を達成しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
H29年度は、TGF-β3を介するB細胞抑制に関わるシグナル伝達機構および、LAG3 TregにおけるTGF-β3産生の自己免疫疾患発症抑制における役割につき、より詳細な検討を行う予定である。具体的には以下の実験を行う。1.TGF-β3による抗体産生抑制メカニズムの解析平成28年度において得られたTGF-β3によるB細胞抑制機構につき、ヒトB細胞を用いて検討し、その抑制機序の異同を明らかとする。2. LAG3 TregによるTGF-β3産生の意義の解明LAG3 TregはTGF-β3だけではなく、SLE患者のCD4陽性T細胞においてcell type specific eQTL (expression Quantitative Trait Locus)効果を認めるJazf1遺伝子を特異的に高発現している。今後は、申請者らが作製したTGFb3 floxedマウスにJazf1 Creマウスを交配することで、LAG3 Treg上のTGF-β3を除去した際の液性免疫応答修飾やループス様病態の出現を経時的に評価する。
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