申請者らは、IL-10産生性CD4陽性CD25陰性LAG3陽性Egr2陽性制御性T細胞(LAG3 Treg)が特異的にTGF-β3産生を介してB細胞機能を抑制することを報告している。本課題では、B細胞に対するTGF-β3の作用機構を解明し、新たな自己免疫疾患治療戦略の確立を目指した。
申請者らはこれまでに、TLR刺激下でTGF-β3およびIL-10が共存することで強力な抗体産生抑制効果を発揮することを同定しており、H28年度はLAG3 TregにおけるEgr2の機能解析を行った。H29年度は、マウスのみならずヒトB 細胞においても、TGF-βまたはIL-10 それぞれ単独ではなく、TGF-β/IL-10共添加においてのみTLRシグナルが強力に抑制されるという知見を得た。フラックスアナライザーを用いた検討では、マウスおよびヒトにおいてTGF-β/IL-10による抑制がB細胞におけるミトコンドリア機能を介していることを明らかにした。さらにLAG3 TregによるTGF-β3産生の意義を解明するため、TGF-b3 floxedマウスおよびJazf1 floxedを独自に作成し、CD4 Creマウスとの交配を行うことでT細胞特異的TGF-β3もしくはJazf1コンディショナルノックアウトマウスをそれぞれ作出することに成功した。Jazf1はSLEの疾患感受性遺伝子である。同マウスの作出によりTGF-β3のin vivoにおける機能解析が可能となった。これらの検討により、B細胞抑制にはLAG3 TregにおけるEgr2発現が必要であり、LAG3 Tregが産生するTGF-β3とIL-10との協調作用がB細胞ミトコンドリア機能を抑制することを明らかとし、当初の目標を達成した。今後は上述マウスの表現型の詳細な解析を行い、SLE病態におけるTGF-β3の役割につき解明を進める。
|