本研究では、原発性免疫不全症(Primary Immunodeficiency: PID)で発症した症例に自己免疫疾患(Autoimmune Diseases: AID)を伴うことがあるならば、AIDで発症した症例にPIDが伴ってくることもあるであろうという逆転の発想に基づくものである。研究成果で、実際にそのような症例が存在することがわかり、その詳細な臨床像、臨床病理像が明らかにされてきた。ここに報告する症例は、34歳、女性で、29歳時に肺炎で入院加療。31歳時、発熱、肺多発結節影、EBV血症を認め、症状は自然軽快したがウイルス血症は2ヶ月後も遷延した。32歳時、両側肉芽腫性ぶどう膜炎を発症、発熱、両下腿紅斑も出現した。リンパ球357/μL、IgG 4650 mg/dL、CT検査で両肺びまん性小粒状影、肝脾腫を認め、心臓超音波検査で心基部から下壁に輝度上昇を認めた。類上皮細胞肉芽腫は証明されなかったが、心サルコイドーシスに準じプレドニゾロン45 mg、アザチオプリン100 mgを開始し改善を認めた。治療開始79日後、発熱、肺多発結節影、βDグルカン600 pg/mL以上で入院し、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス肺炎、BKウイルス血症、JCウイルス血症と診断された。当初からリンパ球減少、グロブリン異常を認め、日和見感染症を重複し、免疫不全症が疑われた。リンパ球幼若化試験でT細胞増殖能の低下を認め、T・B細胞新生能を反映するTREC・KRECが感度以下であり、複合免疫不全症と考えられ全エクソン解析を施行した。この症例でもPID責任遺伝子の異常は見出されなかった。AIDが先行するPIDは特徴的なサブタイプのPIDと考えられる。
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