研究課題/領域番号 |
16K15517
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉田 昌彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (80333532)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感染症防御学 / リポペプチド / MHC分子 / 結晶構造 |
研究実績の概要 |
すでに同定を完了した2種のアカゲザルリポペプチド提示分子に共有される特質を明らかにし、ヒトリポペプチド提示分子の同定に向けた道筋を得ることができた。まず、我々が世界に先駆けて同定したアカゲザルリポペプチド提示MHC分子Mamu-B*098に加えて(Nature Communications, 2016)、新たなアカゲザルリポペプチド提示分子B*nov2の分子実態を明らかにし、そのX線結晶構造を高い解像度で解明することに成功した(投稿準備中)。さらには特異的T細胞抗原受容体を包含した共結晶構造の情報が得られつつある。これらの解析の結果、リポペプチド提示分子に特有の抗原結合構造とそれを支えるアミノ酸残基の存在が明らかとなった。他方、タンパク質輸送や分子フォールディングを促進する種々の因子を欠損した細胞において、Mamu-B*098やB*nov2を強制発現させ、安定的な細胞表面発現の有無を検証した。これらの解析をもとに、従来の抗原提示分子には見られない細胞生物学的特質が明らかとなってきた。これらのアカゲザルリポペプチド提示分子の特徴を具備したヒトリポペプチド提示分子を絞り込む目的で、ヒトMHCアリルをコードする遺伝子を網羅的に単離し、条件に合致するアリルHLA-nov1を同定した。将来的な展開を見据え、HLA-nov1をベースにしたトランスジーンを構築し、トランスジェニックマウスの作出に成功した。すでにトランスジェニックマウスの仔が多数得られつつあり、タンパク質発現と機能を検証する段階に達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒトリポペプチド提示分子の同定に向けて、基盤となる2種のアカゲザルリポペプチド提示分子に関する細胞学的特質と構造学的特質を、当初の予知通りに明らかにすることができた。さらにこの情報をもとに、ヒトリポペプチド提示分子候補を絞り込み、それを発現したトランスジェニックマウスの作出をほぼ完了する段階に達した。それとともに、この候補分子のX線結晶構造が得られつつあり、次年度の発展的研究への基盤が十分に確立できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、研究は順調に進捗しており、当初の計画通りに進めて行く。具体的進路は、以下の2点である。(項目1)ヒトリポペプチド提示分子のX線結晶構造を確定し、リポペプチド結合を支える構造学的特徴を明らかにする。(項目2)ヒトリポペプチド提示分子を発現したトランスジェニックマウスの樹立と解析を進め、リポペプチド提示という機能的観点から個体レベルでの解析を展開する。項目1については、半年以内に完了できると想定している。一方、項目2については、効率的な免疫応答誘起のトライアルが必要と考えられ、1年間を通して種々の可能性を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
作出したトランスジェニックマウスについて、種々の遺伝子欠損マウスとの大規模な交配を計画していたが、異なるプロモーターを利用した複数のマウスラインが樹立できたため、まずその基本的解析を優先し、交配を次年度に先送りしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
種々の遺伝子欠損マウスを購入あるいは樹立し、当該トランスジェニックマウスとの大規模な交配を進める。
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