研究実績の概要 |
デングウイルス(Dengue virus, DENV)感染症は毎年2億人以上の感染者を出す感染症でありながら、未だ4つの血清型全てに十分な効果を示すワクチンは存在しない。そういったこともあり、これまでワクチン研究の多くは中和抗体に代表される液性免疫誘導を目指したものであったが、近年、DENV感染症におけるT細胞を中心とした細胞性免疫の役割に注目が集まっている。研究代表者らもその点に着目し、本研究では、HLA組換えマウスを用いた検討を最終的なゴールとして、まずはiPS細胞由来樹状細胞(Dendritic cell, DC)株を用いたin vitroでのDENV特異的細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T lymphocyte, CTL)誘導を目指した。 平成28年度は、まずiPS細胞由来DC株へのDENVの感染、及びその後のサイトカイン産生などの反応を確認した。その際、コントロールとしてはヒト末梢血由来DCを用いた。その結果、iPS細胞由来DC株は十分DENVの宿主となり得ることが分かった。これらの実験結果をまとめた論文の投稿を現在準備中である。 続いて、DENVに感染したiPS細胞由来DC株とヒト末梢血由来T細胞を共培養し、DENV特異的CTLの誘導を試みた。その結果、十分満足できる強度とは言えないものの、DENV特異的なT細胞活性化を確認できた。 また、これらと並行して、CTL誘導に用いるCTLエピトープペプチドの選定を行った。既報論文、及びImmune Epitope Database and Analysis Resource (IEDB) を用いて、HLA-A24と高い親和性を持つDENV由来エピトープの情報を収集した。
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