研究課題/領域番号 |
16K15521
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中村 朋文 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 研究員 (00772526)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Cas9による遺伝子編集 / 逆転写酵素阻害剤によるNHEJ促進効果 |
研究実績の概要 |
①ベクターの作成:HIV由来の発現様式で非増殖性タイプの蛍光物質を搭載したベクターおよびSaCas9発現ベクター、sgRNA(HIV標的配列を含む)を作成および設定した。②細胞内における蛍光蛋白発現とゲノム編集効果の評価:293T細胞に作成したベクターを遺伝子移入し、HIV由来の発現様式で非増殖性タイプの蛍光物質の発現をFCM、マイクロプレートリーダー、蛍光顕微鏡を用いて確認およびその輝度を測定した。加えてSaCas9およびsgRNA(HIV標的配列)を細胞内に導入し、蛍光物質の輝度を測定することによってSaCas9によるHIVに対するゲノム編集効率を評価した。またsgRNAに関して複数の配列を設定し、その編集効率を評価した。SaCaS9によって標的HIVの配列が明らかに切断され、それと同時に有意な蛍光輝度の低下を認めた。またその蛍光輝度の低下は、SaCa9の発現量に依存的であることが示唆された。その他、オフターゲット効果に関しては、次世代シークエンサーを用いることによって評価する方法を試みている。③逆転写酵素阻害剤(NRTI)のゲノム促進効果:2015年に報告された論文によれば、逆転写酵素阻害剤であるAZTはNHEJ経路を促進したと報告された。したがって、我々の方法も同様にAZT投与により蛍光輝度がさらに低下することが予想された。しかしながら我々の方法では、蛍光の低下は軽微であり有意差を認めなかった。その他、NHEJ阻害剤、HDR促進剤と報告された薬剤に関しても同様の方法で評価したが、いずれも軽微な変化であり有意な蛍光輝度の変化は認めなかった。原因として、細胞の違い(がん細胞由来のcell lineは薬剤の効果が低い)が関係している可能性がある為、新たに幹細胞系の細胞を用いる方法に変更し実験を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年4月に発生した熊本地震により、機器類が破損し実験を数か月にわたり十分に行えなかった。また、2015年に報告された論文データと比して我々の結果と乖離を認めており、その原因究明のため計画外の実験が必要になった。以上により当初の計画より遅れを生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年に報告された論文によれば、逆転写酵素阻害剤であるAZTはNHEJ経路をさらに促進したと報告された。我々の構築した方法では、その効果は軽微であり有意な蛍光輝度の低下を認めなかった。その他、NHEJ阻害剤やHDR促進剤と報告された薬剤に関しても我々の構築した方法を用いて評価したが、蛍光輝度の軽微な変化のみであり有意な蛍光輝度の変化は認めなかった。その原因として、細胞の違い(がん細胞由来のcell lineは薬剤の効果が低い)が関係している可能性があるため、新たに幹細胞系の細胞を用いる方法に変更を検討し、実験を継続中である。また、我々が多数所有する逆転写酵素阻害剤をスクリーニングすることによって、我々の評価方法でNHEJ経路を促進する薬剤を探索・同定も同時進行して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震により研究施設が被災し、研究(実験等)が進行できない状態が数ヶ月継続し、当初の予定より研究が大幅に遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の実験遂行のため試薬および消耗品等の購入が必要である。平成29年12月までに研究成果の取り纏めを行う予定である。
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