研究課題
先天性腎尿路奇形や若年性ネフロン癆の早期診断マーカーは現在存在しない。これらの患者は検尿のみでは見逃され、末期腎不全の状態で発見される例も多い。尿中バイオマーカーの探索を目的とした研究はこれまでに数多く行われてきたにもかかわらず、CAKUTやネフロン癆の早期発見につながるマーカーは開発されていない。その原因はこれらの疾患では血尿蛋白尿を生じず、また希釈尿となることが多いため尿そのものの解析では尿中に極微量含まれる疾患特異的マーカー候補の検出が困難だったからである。また海外においては本邦のような三歳児検尿や学校検尿システムが存在せず、小児腎疾患の早期発見を目指した社会的体制の確立が困難であることも原因である。近年、産生元細胞の分子的特徴が複製された微小分泌小胞「エクソソーム」が尿にも豊富に含まれることが分かってきた。本研究では、腎病変組織由来エクソソームを尿中より単離し、網羅的なプロテオーム解析から各種腎疾患特異的タンパク質を同定することによって、早期発見が難しい小児腎疾患の新規診断法の開発を目指す。早期診断マーカーの道程を目的として、平成28年度として協力医療機関での倫理審査の承諾を得て(1)先天性腎尿路奇形患者(低形成腎、水腎水尿管症、膀胱尿管逆流症)、(2)ネフロン癆患者のサンプルと(3)正常コントロールサンプルのサンプルを収集した。目標症例数の三分の二ほどにに到達している。これらのサンプルからの尿エクソソーム分画の精製を行い、解析に供するための準備を整えている。
3: やや遅れている
エクソソーム分画の精製に用いる超遠心機の故障のため一部のサンプルのエクソソーム精製が遅れていた。使用できる機材が別のものになった場合に精製方法が変わってしまいサンプル間の比較ができないため、新たに全サンプルで精製を行い解析に供することとなった。
全サンプルのプロテオーム解析結果から同定されたバイオマーカー候補分子の機能解析として腎組織を用いた解析やヒト腎細胞株を用いた解析を行い、新たなバイオマーカーの病態への関与について分子生物学的な検討を実施する。また得られた新規マーカー候補についてELISA方による定量評価系を構築し、マススクリーニングとして有用であるかどうかを検証する。
超遠心機の故障のため解析が予定より遅れていること、及びそのために全サンプル調整をやり直す必要があり本年度質量解析に供するサンプル数が限られていた。これらの解析を次年度行う必要が生じた。
H28年度に計画していたサンプルの解析も含めてH29年度に行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Pediatric Nephrology
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Pediatric International
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