ミトコンドリア病はミトコンドリア呼吸鎖複合体の機能低下によりATP 合成能が減少し、心筋や神経をはじめとする全身の様々な組織で機能不全が現れる疾患である。我々はこれまでに300例以上のミトコンドリア病患者 に対して全エクソーム解析を実施し、新規のミトコンドリア関連遺伝子の変異をはじめとする、遺伝的な発症原因を多数同定してきた。一方、核DNAの遺伝子領域またはミトコンドリアDNAのいずれにおいても、ミトコンドリア病の発症原因と判断できる塩基配列変異が検出されない患者検体が約30%存在した。このことから、ミトコンドリア病の発症原因として、タンパクをコードしているミトコンドリア関連遺伝子そのものに変異が生じた事が病因ではなく、それらを標的対象として制御する非コードRNA に質的・量的変化が生じることで、ミトコンドリア病が発症する可能性も考慮する必要があると思われる。そこで本研究ではRNA干渉法やCRISPRの手法により一部のミトコンドリア関連遺伝子発現を抑制した細胞を用いて、非コードRNAの発現解析を行った。その結果、ミトコンドリア関連遺伝子の抑制に伴って、マイクロRNAを含む複数の非コードRNAの発現変動を検出した。これらの中に、ミトコンドリア機能を制御する非コードRNAが含まれる事が示唆される。
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