研究課題
遺伝子変異を有する遺伝子改変動物にiPS細胞由来の神経細胞を移植し、難治性のてんかんの治療が可能か検証するために、現在精神遅滞を伴う難治性てんかん(ドラベ症候群)のノックインマウスの二系統 (ナンセンス変異二種)をCRISPR/Cas9遺伝子編集法を使って作成中である。ドラベ症候群は中枢神経電位依存性ナトリウムチャネルのα1サブユニットをコードする遺伝子SCN1Aの変異による、てんかん性脳症である。SCN1Aの変異は現在までに1200程度報告されており、60%がナンセンス変異を始めとするtruncating 変異と呼ばれ、α1サブユニットの分子途絶を引き起こす。その他の多くはミスセンス変異であり、アミノ酸置換を引き起こす。最近の我々の研究により、ナンセンス変異によるドラベ症候群はミスセンス変異によるものに比べ、精神遅滞が早期に重度に起こることが明らかにされた。このため、今回のドラベ症候群のモデルマウスの作出にノンセンス変異二種類を選んだ。我々がすでに作出した、SCN1Aを含む染色体微小欠失を持つマウスでは、ヒトと同様のけいれんを来たし、早期突然死も観察されている。現在マウスES細胞にScn1a変異を導入して、ピューロマイシンによる薬物選択により、ES細胞のクローニング実施中である。一方、アイソジェニックな人工“健常”iPS細胞および、人工“ドラベ症候群”細胞を作出することを見据え、ヒトドラベ症候群およびiPS細胞にTALEN遺伝子編集法を使い、対照健常者由来のiPS細胞にSCN1Aの変異を導入、またドラベ症候群由来の患者iPS細胞のSCN1Aの変異を修復した。
2: おおむね順調に進展している
現在マウスES細胞にScn1a変異を導入して、ピューロマイシンによる薬物選択により、ES細胞のクローニング実施中である点。一方、アイソジェニックな人工“健常”iPS細胞および、人工“ドラベ症候群”細胞を作出することを見据え、ヒトドラベ症候群およびiPS細胞にTALEN遺伝子編集法を使い、対照健常者由来のiPS細胞にSCN1Aの変異を導入、またドラベ症候群由来の患者iPS細胞のSCN1Aの変異を修復しそれらが成功した点。
作成しているマウスの皮膚より皮膚線維芽細胞を作製し、エピソーマルベクターでOct 3/4,Sox 2, c-Myc, Klf 4を導入しiPS細胞を作製する。変異型iPS細胞に対してすでに実施経験のあるTALEN技術で変異型ナトリウムチャネル遺伝子Scna1A遺伝子を正常型に修正する。この時、マーカーとしてDsRed蛍光蛋白配列を付加する。変異を残したものも作成する。移植後の細胞の腫瘍化を防ぐため以下の前処置をおこなう。まずiPSをニューロスフェアーまで一旦分化させる。続いて、機能不全になりドラベ症候群の原因となるGABA系神経細胞を、GABAB受容体1、2などを利用して、セルソーターで分離する。短時間の培養ののち、脳内へ移植をおこなう。移植部位として、側脳室、視床、尾状核、海馬を候補とする。移植部位と分化状態の条件設定を行うため、移植後5,10,15,20,25,30日で脳切片を作りDsRedを標的に部位と接着を確認する作業を繰り返し、最適条件を決定する。移植神経細胞は、変異を編集により矯正した正常iPS細胞と変異を残したまままの変異iPS細胞(Mock)から、調整した神経細胞を用いる。これによって、変異iPS細胞から調整した神経細胞を移植した動物が変異以外同じ遺伝子をもつiPS細胞由来神経細胞を移植された動物が対照となる。(isogenic control)効果比較のため、行動観察も同時に実施する。とくにドラベ症候群モデル動物は体温上昇で容易にけいれんが誘発されるのが、特徴的であり、熱感受性発作の起こらないマウスは容易に治療効果があったと判断できる。また脳波の改善を確認すると同時に他の異常行動などの表現型も観察するため、24時間ビデオ脳波にて、対照動物とともに観察を行い治療効果を判定する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (3件)
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