「二次がん」は小児がん克服者の最も重要な晩期合併症のひとつである。近年、小児がんの病態には先天的な染色細胞系列の遺伝的バリアントによるCancer predispositionがその発症に関与していることが認識されるようになった。 そこで本研究では、「小児がんの治療終了後に二次がんを発症した患者」を対象とし、網羅的なゲノム解析を行うことで発がんに関与するがん感受性遺伝子のバリアントの有無、すなわち「undiagnosed cancer predisposition」の割合を明らかにすることを目的として解析を行った。 対象となる「二次がんを発症した小児がん患者」27名の正常細胞(末梢血など)からDNAを抽出し、全エクソン解析を行った。Cancer predispositionとなる遺伝子は、Autosomal dominantに発がんに関与することが報告されている110のがん関連遺伝子とした。対照として、119人のがんや血液疾患を持たない成人の解析データとの比較を行った。 二次がん発症者27名のうち、5名(18.5%)に既報のCancer predisposition遺伝子のバリアントが検出された。対照119名からは3名(2.5%)のみであり、p=0.006と有意に二次がん発症者のCancer predispositionの割合が高いことが示された。実際にPTPN11遺伝子んのバリアントをもっていた患者に発症した二次がんの腫瘍細胞には、PTPN11の変異がさらに加わっており、二次がん発症に生殖細胞系列のバリアントが関与していることがより強く示唆された。 小児がん患者の病態には生殖細胞系列の遺伝的背景の関連があることから、腫瘍細胞のゲノミクスと包括的に理解することが重要である。
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