研究課題
ヒト成人の心臓壁は、心外膜、心筋層、心内膜の3層からなる。現在、実験動物においてDTIを用いた心筋の研究が多くなされているが、ヒト発生時・胎児期の心筋走行についての研究は十分なされておらず、とくにCRL100mm以下の個体では走行を画像的に抽出できていない。そこで我々は、ヒト胎児期における左室の心筋線維についてMRIを用いて検討した。対象:京都大学大学院附属先天異常標本解析センターが保有するヒト正常胎児標本6例(CRL:71~160mm)の摘出心臓、およびCRL70mm--90mmの胎児のinvivoの心臓を高解像度MRIで撮像したものを用いた。方法:3次元画像解析ソフトウェアAmira、MATLAB、ImageJを用いて、立体像構築と解析領域の選定および解析を行った。結果:どの横断面においても、前壁・下壁では内膜側から外膜側、中隔では内膜側から右室側にかけて、心筋線維が横断面となす角度はなだらかに変化した。これは成人における変化と同様である。内膜側と外膜側のHelix angleの差は、CRLが大きくなるに従い前壁では88から107°と大きくなり、成人の値(120°)に近づいた。一方、下壁では106-112とほぼ一定で、成人の値より若干小さかった。in vivoの個体についても撮像条件を工夫することでほぼ同様の結果が得られ、今後より小さい標本において検討を加える。また、心尖部は心筋が渦状になる特殊な構造であり、同部の解析はこれまでさ れていない。そこで線維走向データを角速度場に見立てた上で,渦中心を客観 的に決定できる解析手法を新たに提案し,目視評価ながら複数標本において妥 当な結果を得た.引き続き心尖部渦構造の詳細な定量解析を行っている。CRL100mm未満の個体についての心筋走行を検知しえた報告はこれまでなく、本研究の成果は極めて重要である。
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