研究課題
妊娠24週以前の胎児皮膚は瘢痕を形成せず速やかに完全再生することが知られている(Michael S et al., Annals of Biomedical Engineering. 2014)。我々はこれまでに、ヒト羊水幹細胞(human amniotic fluid stem cell: hAFS)がマウス皮膚創傷治癒に与える影響について検討を行い,hAFSが瘢痕化の少ない皮膚創傷治癒を促すことを見出した。我々は、本年度、hAFSを臨床的にも使用しやすい形態である細胞シートの形状にした際に、hAFSの有する細胞特性が保持されるか否かを検討するために、マウス皮膚全層欠損モデルの背部にhAFS細胞シートを貼付し皮膚創傷治癒に与える影響を検討した。(1) 処置後7,14,21日目に肉眼的創部面積を観察し創部縮小率の評価を行った。(2) 安楽死させたマウスの皮膚組織を採取し,組織パラフィン切片を作成し組織学的検討を行った。具体的にはHE染色,Masson’s trichrome染色、Elastica-van-Gieson染色,Picrosirius Red染色によって、再上皮化・肉芽形成・コラーゲン組成の評価を行った。その結果、hAFS細胞シートは無治療のコントロールと比較して、創部縮小率には変化を認めなかった。すなわち、hAFS細胞シートは創傷治癒を促進あるいは遅延させることはなかった。組織学的検討では、Masson’s trichrome染色による再上皮化とElastica-van-Gieson染色による肉芽形成は、コントロールと比較して有意な変化を認めなかった。しかし、Picrosirius Red染色によって評価した処置後21日目のコラーゲン組成は、コントロールと比較しⅢ型コラーゲンが有意に多かった。以上より、hAFS細胞シートは創傷治癒を遅延させることなく、瘢痕化の少ない創傷治癒を促すことが明らかとなった。また、胎児型創傷治癒は成人型創傷治癒と比較しⅢ型コラーゲンが豊富に発現することが知られている。このことから、hAFS細胞シートは胎児型創傷治癒の特徴を保持していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
hAFS細胞シートは創傷治癒を遅延させることなく、瘢痕化の少ない創傷治癒を促すことを見いだしたため。
hAFS細胞シートの抗繊維化作用について論文作成作業を行っていく。また、hAFSの多分化能の検討や、効率的な分化誘導条件の検討を行う。このことにより、hAFSの高い分化能を生かした細胞シートの作成が可能になると考えている。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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