本研究では、胎生期から新生児期の血中酸素濃度の変化が、肺小動脈及び動脈管の酸素感知機構を確立すると仮説を立てた。この仮説を実証するために、酸素濃度の変化によりラット肺小動脈平滑筋細胞及び動脈管平滑筋細胞の遺伝子発現がどのように変化するのかを確認する。 まず、胎生後期のラット肺小動脈及び動脈管から初代培養を行い、ラット肺小動脈平滑筋細胞及び動脈管平滑筋細胞を採取した。平滑筋マーカーの免疫染色で平滑筋細胞であることを確認した後、これらの平滑筋細胞を低酸素インキュベータで3日間培養した群と、低酸素インキュベータで2日間培養後、正常酸素インキュベータで1日間培養した群をそれぞれDNAマイクロアレイ解析し、遺伝子発現を確認した。 酸素濃度の上昇により、肺小動脈は拡張し、動脈管は収縮する。この二つの血管は酸素濃度の変化により、相反する機能的変化をきたす。今回の網羅的解析の結果、肺小動脈平滑筋細胞及び動脈管平滑筋細胞で、酸素濃度の上昇により、transmembrane protein 104やolfactory receptor 1262の発現が優位に上昇し、ankyrin repeat domain 37の発現が優位に低下した。しかしながら、酸素濃度の変化による相反する発現変化をきたす遺伝子の同定はできなかった。今後、肺小動脈や動脈管におけるこれらの遺伝子の機能を調査し、肺小動脈及び動脈管の酸素感知機構に関与するメカニズムを解明していく。
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