本研究は、先天性高アンモニア血症患者に対する細胞治療としてのヒト多能性幹細胞由来肝細胞様細胞の作製とその有効性の評価を目的とするものである。重篤な高アンモニア血症患者へは肝移植が有用だが、ドナー不足等の問題が多いため、移植までの代替細胞としてヒト多能性幹細胞由来肝細胞様細胞の開発が望まれている。臨床応用へ向けての最適な肝細胞分化誘導系の確立と、その有用性の探索などの前臨床試験の基盤技術を整備する。また肝細胞の凍結保存技術は未だ確立されておらず、細胞保存による肝細胞としての機能低下が問題視されている。そこで本研究では、分化誘導肝細胞の移植までの保存法についても技術開発を行なっていく。特に、アンモニア代謝能を持つ細胞製剤について、機能維持培養、保存系を確立する。本研究ではエンドポイントにおける有効性を鑑みた上で、原材料及び製造関連物質、製造工程、 加工した細胞の特性解析、最終製品の形態・包装、製造方法の恒常性及び妥当性、製造方法の変更、製造施設・設備の概要、感染性物質の安全性評価、最終製品の品質管理法、試験方法のバリデーション、規格及び試験方法の妥当性、試験に用いた検体の分析結果、細胞・組織加工医薬品の非臨床安全性試験、細胞・組織加工医薬品等の効力又は性能を裏付ける試験、細胞・組織加工医薬品等の体内動態、臨床試験に関して詳細に検討し、細胞医療の安全性及び有効性に関するデータの蓄積と周辺基盤技術を構築する。本年度は特に、遺伝子導入あるいは三次元培養に伴う遺伝子発現変化を解析した。メッセンジャーRNAの発現解析に加え、発生・分化等の過程に多大な影響を及ぼすことが明らかとなりつつある二十数塩基のマイクロRNAの発現解析等を行うことで、ヒトES細胞の肝細胞分化・成熟化を促進する新規遺伝子群に関する検討を実施した。
|