色素細胞の自然免疫機構によるメラノソーム・メラニン合成機構輸送の影響を確認する実験を計画した。まずは、細菌要素分子を主体とした自然免疫機構活性化因子(TLRs刺激因子)で、培養正常ヒト・メラノサイトを刺激し、メラニン産生関連遺伝子の発現、メラニン分泌能、角化細胞のメラニン取り込み能を検討した。培養正常ヒト・メラノサイトをTLRs刺激因子(TLR1-9リガンド)で刺激し、24・48時間後の培養液中へのメラニン/メラノソームの放出を測定(OD400-450 nmの計測)したところ、TLR3リガンドでメラノソームの放出が増加することが確認された。興味深いことに、TLR3リガンドの刺激はメラニン産生関連遺伝子を増加させずに、細胞外のメラニン放出を促進していた。また、表皮角化細胞との共培養下において、メラノソームを抗gp100抗体で、角化細胞の形状を抗ケラチン抗体で、細胞核をDAPIで染色することにより、メラノソームの移譲を免疫染色法で経時的に観察すると、TLR3リガンドは、角化細胞へのメラノソーム輸送を促進した。これらの結果は、TLR3リガンドはメラニン産生・合成能に直接働くのでは無く、メラノソーム・メラニン輸送経路を活性化させることに作用することを示唆した。また、この輸送経路の活性化には膜関連GTPaseであるRabの産生誘導や活性化が複数関連することが示唆された。特にRAB27Aが主体的に働いており、この内容について論文報告した(Pigment Cell and Melanoma Research 2018 e-published)。またその他に複数のRAB分子群の関与を確認し、論文投稿準備中である。
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