研究実績の概要 |
今年度は、全身性強皮症(SSc)の表皮細胞依存性皮膚硬化を制御する因子としてIL-1 alphaとIL-6が重要であること、さらにpsoriasin, LL-37も関与していることが明らかとなった。 一部のSSc患者はmechanical stressを受けやすい部位に限局性強皮症(LSc)様皮疹を生じるが、この皮疹を生じるSSc患者では表皮細胞におけるIL-1 alphaの発現量が亢進している。表皮細胞特異的Fli1欠失マウス(Fli1flox/flox;K14-Cre)はSScの表皮細胞の形質を模倣し、かつ自然経過で皮膚硬化を発症するが、獲得免疫系を持たない形質をこのマウスに導入しても(Rag1-/-;Fli1flox/flox;K14-Cre)、皮膚硬化は自然発症することが明らかとなり、その過程には肥満細胞が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。SSc患者に伴うLSc様皮疹では肥満細胞の浸潤が顕著であり、肥満細胞はIL-1 alpha刺激によりIL-6を産生する性質を有していること、IL-6がSScの皮膚硬化に深くかかわることから、LSc様皮疹でみられる線維化にはIL-1 alpshaとIL-6が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 Psoriasin, LL-37については、SSc患者の病変部皮膚の表皮細胞において発現が亢進していること、それぞれ表皮細胞によるIL-6産生と形質細胞様樹状細胞によりIFN-alpha産生を介して皮膚線維化に関与する可能性が示唆された。 以上の研究結果は、IL-1 alpha, psoriasin, LL-37が強皮症の表皮細胞を標的とした治療戦略を開発する上で、良き標的分子となりうることを示唆している。現在、これらの分子の発現を表皮細胞において抑制する方法として、核酸医薬外用薬の開発を進めている。
|