研究課題/領域番号 |
16K15550
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
永井 彩子 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (90420562)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セボゾーム / 膜小胞 |
研究実績の概要 |
脂腺細胞 (Sebocytes)は、スクアレンなどの脂質を合成し、分化後、皮脂として皮膚表面に分泌する。我々は、ラットの脂腺細胞を培養したところ、増殖中には脂質顆粒を含む膜小胞を活発に生成・遊離することを発見し、同膜小胞を「Sebosomes」と命名した(Endocrinology 2005年)。Sebosomesはリサイクリングおよび、早期-後期エンドゾーム、リソゾーム、脂質ラフトなども含む新型の複合膜系であった。また、Sebosomesはスクアレンやヒストンを濃縮し、保湿機能や、抗菌活性が示唆された。また、Sebosomesは様々な分子の細胞間の担体となりうると期待される。今回、細胞に添加したRNAがSebosomesへと移送された後、細胞外へ輸送される可能性について検討した。 初代培養の脂腺細胞はEGF添加D'MEMで培養維持した。Sebosomesはリソゾーム成分の確認のためLysoTracker (invitrogen)で染色した。RNAはSYTO RNASelect Green Fluorescent Cell Stain (Invitrogen)で、DNAはHoechst (invitrogen)で染色、蛍光顕微鏡で観察した。Cy3標識ネガティブコントロールsiRNA (Ambion)はリポフェクションで脂腺細胞に導入した。 その結果、SYTO RNASelectの蛍光はSebosomesに検出された。Hoechstの蛍光は脂腺細胞の核では検出され、Sebosomesには検出されなかった。Cy3標識ネガティブコントロールsiRNAの蛍光は細胞内とSebosomesに検出された。従って、培養脂腺細胞のSebosomesはヒストンH3やスクアレンなど、特定のタンパク質や脂質を濃縮する他に、RNAも濃縮することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に導入したLED蛍光顕微鏡により、細胞ダメージのより少ない良観察環境となった。また、本研究で扱う脂腺細胞は遺伝子導入効率が比較的低く、導入効率の改善が課題であるが、新規の遺伝子導入試薬の導入やsiRNAの導入条件の見直しにより、従来に比べてより良い解析条件を整えることができた。 さらに、H28年度の日本分子生物学会年会での本研究結果の発表をきっかけに、脂腺の異常増殖が起こるモデル動物を持つ国内の研究機関との共同研究を開始できた。病態につながる、大変興味深い知見が得られており、引き続きsiRNAを用いたノックダウン研究を中心に、詳細な検討を行っている。 H28年4月(EMN)、H29年3月(WCSM)に続き、H30年3月にも国際学会から招待講演の機会を得ており、本研究の新規性、独自性について注目され、多くの評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、セボゾームの生成・分泌機構やその機能についての検討を進める。現在、セボゾームの生成分泌促進に働く候補因子を複数同定している。前年度に実験の条件調整と準備ができた遺伝子導入試薬、siRNAノックダウン実験系を用い、セボゾーム分泌機構を促進・阻害する因子の更なる検索および同機構の解明を進めていく。更に、前年度に引き続き、セボゾームの周辺細胞への物質輸送機能について、脂腺細胞の生成するスクアレンやステロイドホルモンおよび脂溶性ビタミン類などセボゾームの脂質顆粒をキャリアーとして、また、同時にヒストンなどの抗菌性水溶性蛋白質などを含んで、表皮細胞などの周辺細胞に対する、特長のある両親媒性デリバリーシステムとしての機能解析や、臨床応用への可能性について検討する。 H29年度はH29年12月に日本分子生物学会年会で本研究結果の一部を発表し、H28年4月(EMN)、H29年3月(WCSM)に続いて、H30年3月にも国際学会から招待講演の機会を得て発表した。いずれも、本研究の新規性、独自性について高く評価された。さらに、共同研究の機会も得られるので、引き続き、国内外での研究発表を進めていく。続いて、現在論文作成中であり、最終年度にまとめる予定である。
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