研究課題/領域番号 |
16K15558
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
武井 教使 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (80206937)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | いじめ / 抑うつ / 不安 / 自殺念慮 / 追跡調査 |
研究実績の概要 |
初年度は、I市内の参加同意を得ることができた小学校6校、中学校3校、計9校を対象として調査を行った。対象者数は児童生徒2384名、保護者238名、教職員266名であった。児童生徒、保護者、教職員とも回収率は非常に高く(ほぼ90%以上)、大規模で包括的な調査を行うことができた。 いじめに関する調査において、調査前の2~3か月の間に何らかのいじめ被害を一度でも受けたことがあると回答した児童生徒の割合は41.1%であった。また1度でもいじめを見たり聞いたりしたことがあると回答した児童生徒の割合は33.5%であった。一方で一度でも子どもがいじめられたことがあると回答した保護者の割合は16.1%であった。また一度でもいじめを見聞きしたことがあると回答した教職員の割合は68.4%であった。いじめの種類の中では、言葉のいじめが最も多くみられた。いじめ加害については、17.5%の児童生徒がいじめに加わったことがあると回答した。 いじめ被害を一度でも受けたことがあると回答した場合、抑うつ尺度のスコアが1.9点(0.5標準偏差)増加すること(p<0.001)、不安尺度のスコアが2.1点(0.5SD)増加すること(p<0.001)が分かった。また、いじめ被害を受けたと回答した場合、子どもの強さと困難さ尺度(SDQ)の全体的な困難さのスコアは1.9点(0.4SD)増加することが分かった。さらに、登校状況について、調査前1ヶ月間の欠席日数3日以上、遅刻2日以上、早退2日以上(いずれも1SD以上)のいずれかに該当するケースを「登校不安定」群とした時、いじめ被害を受けたと回答した児童生徒が登校不安定群である確率が高いことが分かった(オッズ比2.9、p=0.002)。ただし、これらは単年度の調査であるため、いじめ被害との因果関係を特定することは難しいため、今後の追跡調査によって明らかにしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はI市全市調査を計画していたが、各学校の都合もあり、全市調査は困難であった。また、自殺念慮について直接的に尋ねることについて抵抗感があり、抑うつ尺度の中に含まれる項目の中で尋ねている。この他、調査協力の同意を得られた学校については、予定通りの調査を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、I市内の同一対象者について、初年度と同様の調査を行う。この際、学校に協力を得て、前年度の学年・組・出席番号と本年度学年・組・出席番号を紐づけてもらう。この情報をもとに、前年度のIDと本年度のID番号を紐づけることにより、無記名式かつ年度をまたいだ調査を継続し、引き続きいじめの調査を行う。そして初年度のいじめ被害の有無と、翌年度の抑うつや不安、登校の問題等について解析を行い、因果関係を明らかにすることを目的とする。また、保護者の評価項目から、保護者の年収や教育歴、子どもの発達障がいやアレルギー等といじめとの関連についても解析を進める。さらにこれらの成果を教員対象の夏季研修にて報告し、対策について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は調査用紙の配布、回収、データ入力等のための人件費と、収集したデータの管理のためのデータベース構築を予定していたが、まだデータベースの構築が完了していない。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に引き続き、調査用紙の配布、回収、データ入力等を行う。さらに追跡調査によって付け加えられた個人データを前年度のデータと関連付けること、安全に管理することが可能なデータベース構築を進めていく。
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