研究実績の概要 |
いじめは学齢期の子どものメンタルヘルスや学業成績に及ぼす影響のみならず、成人後の抑うつや不安、自殺念慮等にも影響を及ぼすとして、多くの研究がなされている。わが国でも、いじめが問題視されているが、実際にいじめ被害がメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか、包括的な科学的研究はなされていない。本申請では、学校をベースに大規模研究な前方視追跡研究を行っている。 前年度の調査において、調査前1ヶ月間の欠席3日・遅刻2日・早退2日以上(いずれも1SD以上)のいずれかに該当するケースを「登校不安定」群とした時、いじめ被害を受けたと回答した児童生徒が登校不安定群である確率が高いことが分かった。今年度は、いじめ被害と不登校傾向の因果関係を調べるため、前年度からの経年調査を行った304名について、平成28年度の年間欠席日数、年間遅刻日数、年間早退日数といじめ被害・加害が関連しているかどうかを調べた。平成28年度の年間欠席日数は、平均6.3日(SD=24.9)であった。遅刻は平均1.6日(SD=8.1)、早退は平均0.6日(SD=2.9)であった。いずれの変数もゼロが大多数を占め、過分散であったため、負の二項回帰モデルを用いて解析を行った。その結果、いじめ被害経験がある場合、欠席日数の発生率のリスクが増加した(incidence rate ratio, IRR = 2.31, p = 0.04)。子どもの強さと困難さアンケート(保護者記入)のtotal difficulty scoreで示される特別なニーズの必要性がある場合、抑うつスコア(DSRS-C短縮版)が高い場合にも、欠席日数の発生リスクは増加した(それぞれ、IRR = 6.13, p = 0.02; IRR = 1.15, p = 0.01)。年間遅刻・早退日数については、いずれの変数とも有意な関連はみられなかった。
|