研究課題
精神疾患の分子病態を反映したモデル動物を見つけるため、国立精神・神経医療研究センターの一戸紀孝博士の協力を得て、コモンマーモセットを対象にcomparative genomic hybridization法(CGH法)を用いたゲノムコピー数変異(CNV)解析を実施した。コモンマーモセットは社会性が高い霊長類動物であり、ヒトの精神疾患に関連したCNVをもつ個体を同定できれば、精神疾患モデルとして利用することが期待できる。マーモセットは血液細胞がキメラであるため、本研究では皮膚細胞を培養した上で解析に必要なゲノムを得ることとした。今年度は皮膚培養細胞から高品質ゲノムを得るための条件設定を行ったうえで、マーモセット個体約30頭のCNV解析を実施し、得られたCNVデータに遺伝子アノテーションを付与した。現在までの成果として、16番染色体にサイズ8.4Mbの大規模欠失を有する固体を1頭同定した。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、コモンマーモセットからゲノムを収集し、CGH法を用いた全ゲノムCNV解析を実施した。すでに約30頭の個体のCNV実験を終えて、得られたCNVデータの解析(遺伝子アノテーション)を進めた。1個体あたりに見つかったCNVの数が予想よりも少なかったが、1個体において16番染色体の大規模欠失を同定した。このサイズのCNVは、ヒトであれば神経発達症の発症に寄与する可能性が十分にある。以上から、本研究はおおむね順調に進展している。
H29年度も引き続き、ゲノムのサンプリングとともに、個体数を増やしてマーモセットのCNV解析を実施し、精神疾患発症に関連したCNVをもつマーモセット個体を探索する。また精神疾患の発症に関連したCNVが見つかった場合は、その個体の表現型について詳細に調べ、さらに同CNVをもつ患者の表現型と比較することで、精神疾患モデルとしての妥当性を検証する。
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