研究課題
終末期せん妄は50-80%の終末期患者に認められ、患者・家族の苦痛が極めて強い症状である。先行研究で50%の症例で可逆性があると報告されている。実臨床において、終末期せん妄が治療反応性か否かで治療戦略が全く変わってくるため、「who:誰がせん妄を発症するか」「what:せん妄は治療反応性であるか」を予測するこが重要だが、現在の知見ではほとんど不可能である。本研究は終末期がん患者の中で、誰が過活動型せん妄を発症するか、発症したせん妄が治療抵抗性であるかどうかを予測することを目的に、終末期患者の臨床データを経時的に取得し、終末期せん妄の発症予測モデルを作成することを目的としている。2020年3月までに、多施設からなる終末期コホート研究の一環として、患者基本情報、併存疾患、がんおよび転移巣の進展度、使用薬剤、終末期せん妄の発症、持続鎮静の要否に関する情報の取得を行った。全症例の観察期間が満了し1896人の終末期がん患者の臨床データが得られた。その中で、Palliative Performance Scale(PPS) 20点以下で定義される、死亡直前期の経時測定データが得られた1396人を対象に終末期せん妄の発症率、予測因子の検討を行った。当該集団において、終末期過活動せん妄を発症したものの割合は31.9%(n=445)であった。背景因子として、年齢、転移巣の有無、PPS=20点となった時点での予測生存期間はいずれも過活動せん妄の発症と関連しなかった。一方、入院後1週時点でのオピオイド使用量(経口モルヒネ換算)は、過活動せん妄発症群で有意に多かった(89 vs 67 mg/day, p=0.003)。本研究によりこれまで大規模データが得られなかったがん終末期患者の死亡直前期における過活動せん妄の発症率、発症の予測因子が明らかとなった。
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Support Care Cancer
巻: Epub ahead of print ページ: Epub
10.1007/s00520-020-05408-x