研究課題/領域番号 |
16K15564
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
荻原 郁夫 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30373286)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん / 電位依存性ナトリウムチャネル |
研究実績の概要 |
Dravet症候群は、難治性てんかんと発症後の精神運動発達退行を特徴とする乳児期発症のてんかん性脳症であり、およそ8割の患児に電位依存性ナトリウムチャネルα1(SCN1A)遺伝子のヘテロ接合性変異が認められている。Dravet症候群に認められたSCN1A遺伝子変異を導入した病態モデルマウスの研究は、ナトリウムチャネルα1が、乳児マウス脳において、抑制性神経細胞の軸索起始部に局在すること、さらに、持続性刺激に対して抑制性神経細胞が応答する連続発火の振幅がヘテロ接合性遺伝子変異によるハプロ不全(発現量半減)によって著しく減衰することを認めた。以上の知見は、抑制性神経細胞の発火減弱が脳の興奮性を高めてDravet症候群が発症することを示唆した。本研究は、ナトリウムチャネルα1発現量半減による抑制性神経細胞の発火減弱は、正常アリル由来ナトリウムチャネルα1の細胞内輸送促進や局在性発現安定化で軽減できると仮定し、このチャネルの細胞内輸送と局在性発現の制御機構を解明することを目的とした。 平成28年度は、抗ナトリウムチャネルα1抗体を用いた免疫沈降法を施行し、免疫沈降産物を液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC-MS/MS法)を用いて解析した。免疫沈降産物には、ナトリウムチャネルβサブユニット(β1,2,4)やカルモジュリン、線維芽細胞増殖因子(FGF12, 13)といったナトリウムチャネルα1と物理的、あるいは機能的に相互作用することが報告されているタンパク分子が同定された。同時に、ナトリウムチャネルα1との相互作用について報告のないタンパク分子もあり、それらタンパク分子とナトリウムチャネルα1の複合体形成や共局在の有無について更なる研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗ナトリウムチャネルα1抗体を用いた免疫沈降法によって、ナトリウムチャネルα1が高度に濃縮されたことがLC-MS/MS法によって再確認できた。また、ナトリウムチャネルβ1,2,4やカルモジュリン、線維芽細胞増殖因子(FGF12, 13)といったナトリウムチャネルα1と物理的、あるいは機能的に相互作用することが報告されているタンパク分子が免疫沈降産物に含まれていることを確認できた。さらに、ナトリウムチャネルα1との相互作用について報告のないタンパク分子も免疫沈降産物から同定することができた。以上のことから、計画はおおむね順調に推移しているということが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
抗ナトリウムチャネルα1抗体を用いた免疫沈降法とLC-MS/MS法によって同定されたタンパク分子のうち、ナトリウムチャネルα1との相互作用についての報告のない分子に焦点をしぼり、ナトリウムチャネルα1との複合体形成や共局在性の有無について多方面から検証、確認を行う。また、それら結合候補タンパク分子の発現の抑制や亢進がナトリウムチャネルα1の機能や局在性に及ぼす影響について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法について、当初は民間企業のタンパク質受託解析サービスの利用を計画していたが、公的研究機関との共同研究で実施できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ナトリウムチャネルα1結合タンパクを標的とした抗体やsiRNA、cDNAを購入する。
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