研究実績の概要 |
Dravet症候群は乳児期発症のてんかん性脳症であり、難治性てんかん発作と発症後の精神運動発達退行を特徴とする。8割の患児に電位依存性ナトリウムチャネルα1(SCN1A)遺伝子の変異が認められている。これまでに我々はDravet症候群に認められた遺伝子変異を導入した病態モデルマウスを作製し、抑制性神経細胞の発火減弱が脳の興奮性を高めてDravet症候群が発症することを示した。本研究は、ナトリウムチャネルα1(Nav1.1)の細胞内輸送と局在性発現の制御機構を解明することを目的とした。 平成28年度は、抗Nav1.1抗体を用いた免疫沈降法を施行し、沈降物をLC-MS/MS法により解析した。沈降物にNav1.1と物理的、あるいは機能的に相互作用することが報告されているタンパク分子が同定された。同時に、Nav1.1との相互作用が未報告のタンパク分子も見つかった。そして、脳内局在情報から、3種類を候補タンパク分子(A, B, C)を以降の研究対象として選定した。 平成29年度は、脳抽出物について共免疫沈降法を施行した。抗Nav1.1抗体を用いた沈降物には候補タンパク分子のいずれもが検出された。また、候補タンパクA, Bに対する抗体を用いた沈降物にNav1.1は検出されたが、候補タンパクCに対する抗体を用いた沈降物にNav1.1は検出されなかった。次に、3つの候補タンパク質をタグで標識し、別のタグを付加したNav1.1とともに培養細胞に強制発現させた後、抗タグ抗体を用いた共免疫沈降を施行した。Nav1.1を標的とした沈降物には候補タンパク分子がいずれも検出されたが、候補タンパク分子を標的とした沈降物にはNav1.1が検出されなかった。培養細胞においては、Nav1.1の発現量が非常に低く、さらなる実験条件の検討が必要である。
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