研究課題
アルコール依存症とうつ病は合併頻度が高く、既存の抗うつ薬では治療効果が低いことから、合併患者における発症メカニズム解明と治療法の開発が求められているものの、動物モデルを用いたアルコール依存併発の難治性うつ病研究は殆ど行われていない。本研究では、アルコール依存併発の難治性うつ病モデルマウスを作成し、モデルマウスを用いた行動薬理学的解析によりケタミンの有効性を評価するとともに、遺伝子欠損マウスを用いてケタミンの抗うつ効果発現におけるNMDA受容体GluN2Dサブユニットの役割を明らかにすることを目的として研究を進めている。昨年度に引き続き、アルコール依存併発の難治性うつ病モデルマウス作成を試み、処置アルコールの濃度・期間ならびに負荷ストレスの強度・期間を検討し、アルコール濃度を段階的に増やした後、3週間の自己選択式処置を行ったマウスにおいては、5日間拘束ストレスを負荷することで抑うつ様行動が見られることを、スクロース嗜好性試験および新奇環境摂食抑制試験により明らかにしている。この抑うつ様行動は、フルオキセチを5日間処置では寛解せず、アルコール依存併発の難治性うつ病モデルマウスとして有用である可能性がある。さらに、ケタミンの単回投与で抑うつ様行動が寛解する傾向を示しており、より臨床の報告に即したモデルとなることが期待される。また、GluN2Dの遺伝子欠損マウスを用いて、ケタミンおよびその光学異性体の抗うつ作用の変化を尾懸垂試験により解析し、その抗うつ作用発現においてはGluN2Dの関与は少ないものの、単回投与後において見られる持続的な抗うつ作用発現においては、光学異性体のRケタミンの作用発現にGluN2Dが重要な役割を担っていることを明らかとし、論文報告を行った。さらに現在、ケタミンおよびその光学異性体の副作用発現におけるGluN2Dの役割に関しても検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
アルコール依存併発の難治性うつ病モデルマウス作成に関して、確立の目途が立ってきており、おおむね順調である。また、GluN2D欠損マウスを用いた解析においては、ラセミ体ケタミンのみならず光学異性体を含めた解析も研究計画を前倒しにして進め、研究成果を論文報告の形で公表しており、全体として研究の進捗状況はおおむね順調であると評価できる。
アルコール依存併発の難治性うつ病モデルマウス候補におけるケタミンの抗うつ効果に関して検討を行うことで、その有用性を検討する。また、GluN2D欠損マウスを用いたモデルマウス作成を行うことで、アルコール依存併発の難治性うつ病におけるGluN2Dの役割を明らかにする。
一部研究を前倒しに行った結果、論文投稿ならびに国際学会発表を当初予定に追加して行う計画が生じ、次年度に、その費用として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (27件) (うち国際共著 2件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (41件) (うち国際学会 18件、 招待講演 8件) 備考 (2件)
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