研究課題/領域番号 |
16K15569
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
三浦 富智 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (20261456)
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研究分担者 |
阿部 悠 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00722472)
葛西 宏介 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (50400148)
有吉 健太郎 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 助教 (50462750)
吉田 光明 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (60182789)
中田 章史 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (70415420)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 染色体異常 / 放射線生物影響 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究において、1Gy X線照射マウス照射24時間後の2型糖尿病マウス(B6.Cg-Lepob/J)では、DNA損傷フォーカス、二動原体染色体および微小核が野生型マウスに比べて増加していたことから、糖尿病等の慢性炎症性疾患が放射線被ばくの生物学的影響を増悪させる可能性が示唆された。そこで、2型糖尿病マウスにおいて、腸管組織を病理組織学的に解析し、他のエンドポイントでも放射線生物影響の増悪が認められるかどうかを検証した。2型糖尿病マウスの微絨毛長は野生型マウスに比べて優位に長かったが、非照射群と1Gy X線照射群との間に有意な差は認められなかった。腸管組織におけるクリプト長についても野生型マウスと2型糖尿病マウスの間で変化は認められなかった。1Gy照射では、腸管組織への障害が誘導されていない可能性があるため、5Gy照射から7日後の小腸および脾臓組織を比較した。微絨毛長およびクリプト長に変化は認められなかったが、微絨毛当たりの杯細胞数が野生型マウスでは5Gy照射後に減少したのに対し、2型糖尿病マウスでは、杯細胞数の減少が抑制された。さらに、5Gy照射7日後の骨髄細胞における不安定型染色体異常を比較した。脾臓リンパ球では、不安定型染色体異常である二動原体染色体が検出されたのに対し、骨髄細胞では不安定型染色体異常がほとんど観察されず、分裂組織と細胞周期外にある細胞が豊富なリンパ組織では、検出される染色体異常の種類に差が認められた。この事実は、染色体異常を指標とした生物学的影響評価における重要な課題を提起することとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞遺伝学的エンドポイント(二動原体染色体および微小核)とDNA損傷フォーカスに加え、病理組織学的評価をここと見たが、非照射群と1Gy X線照射群との間に有意な差は認められなかった。腸管組織におけるクリプト長についても野生型マウスと2型糖尿病マウスの間で変化は認められなかった。そのため、高線量被ばく(5Gy X線)を実施し、再度組織病理組織学的評価を試みたが、微絨毛長およびクリプト長に変化は認められなかった。このため、放射線被ばくにおける生物影響評価において、組織学的知見を追加することができず、研究計画としてやや遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度において病理組織学的解析および、タイトジャンクションの評価が困難だったため、さらなる高線量(10Gy X線)での影響評価を実施する。 さらに、X線照射/非照射および正常/糖尿病マウスの血清をそれぞれ分離し、培養液中に添加する。さらに各条件にて採取した脾臓より分離した脾細胞を添加し(コンディションドex vivo 培養)、DIC 法を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
福島県立医科大学において、細胞遺伝学的解析試薬が予定より安価に納品されたため、若干の残額が発生した。残額は次年度の染色体解析用試薬に充てる。
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備考 |
今年度、4th Educational Symposium on RADIATION AND HEALTH by young scientists: ESRAH2017において、本研究を発表した大学院生がPoster Awardを受賞した。
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