研究課題
パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症などのαシヌクレイノパチーの治療薬開発においては、αシヌクレインの脳内蓄積量をモニタリングするためのバイオマーカーの実用化が求められている。そこでαシヌクレイン蛋白を検出するためのPETプローブを開発する目的で、昨年度に引き続き、化合物のスクリーニングを実施した。パーキンソン病およびレビー小体型認知症の脳病理組織標本を用いて、研究室内で保有する300化合物の結合性を蛍光顕微鏡下で評価した。その結果、レビー小体を明瞭に染色する新たな化合物群を見出した。さらに化合物のαシヌクレイン蛋白線維との結合親和性を評価するため、これまでに見出したヒット化合物の一つを125Iで標識し、被検化合物による結合阻害実験を実施した。その結果、今回見出した化合物はナノモル濃度域でαシヌクレイン蛋白線維との高い結合性を示した。さらに被検化合物を18Fで放射性標識し、ヒト脳組織切片を用いてオートラジオグラフィーを実施した。その結果、レビー小体型認知症患者の扁桃体脳切片において強い結合が観察され、同化合物がナノモル濃度域でレビー小体と結合している可能性が示唆された。しかしながらアルツハイマー病患者脳切片において老人斑との結合も併せて確認されたことから、αシヌクレインPETプローブとしての結合選択性は不十分であると判断された。化合物の脳移行性についても検討したところ、投与2分後の脳内濃度は3%ID/g以上であり、既存のアミロイドPETプローブと同等の脳血液関門透過性を有していた。
2: おおむね順調に進展している
化合物スクリーニングにおいて、αシヌクレインとの結合性を有する化合物群を新たに見出すことができた。化合物は脳血液関門透過性を有することから、今後結合選択性を高めることで、生体用プローブとしての応用が可能ではないかと考えられる。
引き続き化合物スクリーニングを実施して、プローブに適した候補化合物の探索を進める。同時にこれまでに見出されたヒット化合物をポジトロン核種で標識し、化合物の詳細な結合性を明らかにし、最適化を進める予定である。
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