研究課題
神経変性疾患の治療薬開発においては、ミスフォールディング蛋白の脳内蓄積量をモニタリングするための画像バイオマーカーが求められている。本研究ではαシヌクレイン蛋白やTDP-43を検出するためのPETプローブを開発するため、候補化合物のスクリーニングを実施した。パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症の脳病理組織標本を用いて、研究室内で保有する350化合物の結合性を蛍光顕微鏡下で評価した。その結果、レビー小体を明瞭に染色する新規化合物群を発見したが、TDP-43への結合性をもつ有望なプローブ候補化合物は見出されなかった。ヒット化合物群のαシヌクレイン蛋白線維との結合親和性を評価するため、化合物の一つを125Iで標識して、被検化合物による結合阻害実験を実施した。その結果、複数の候補化合物はナノモル濃度域でαシヌクレイン蛋白線維との高い結合性が認められた。αシヌクレインのモデル動物脳切片においても、αシヌクレイン蛋白との結合が観察された。候補化合物の一つである化合物Eを18Fで標識し、マウスに静脈内投与した結果、投与直後の化合物の脳移行性およびその後のクリアランスは生体用プローブとして実用的なレベルにあった。さらにヒト脳組織切片を用いてオートラジオグラフィーを実施した結果、レビー小体型認知症患者の扁桃体脳切片においてプローブの強い結合が認められ、同化合物がナノモル濃度域でレビー小体と結合していることが示唆された。しかしながらアルツハイマー病患者脳切片において老人斑との結合を認めたほか、ミエリンとの結合も併せて確認されたことから、結合選択性が不十分と考えられた。今後、更なる最適化を進め、αシヌクレイン選択的PETプローブの早期実用化をめざしたいと考えている。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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